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叶わない29 ページ36

『……ただいま』


前まではこうしてただいまを言うのが一番好きだったのに。

今は、ただいまを言うのがとっても億劫になる。


少しすると相変わらず細っこいキヨ兄が顔を出した。


キヨ 「…おかえり」


さっき私が思った事はキヨ兄にも該当しているらしい。気まずそう。


『…私、キヨ兄の家、出ようと思う。4ヶ月だけだったけど、本当にお世話になりました…』


その場でぺこりと頭を下げる。


キヨ 「…あぁ、こっちこそ色々とありがとな。ま、気を付けんだぞ」

ああ…やっぱり引き止めてくれないんだね、キヨ兄。

嫌なんだよ、本当は。

キヨ兄から離れたくないに決まってるじゃん…



そう思ったら、ふと目から涙が溢れて、急いで拭う。


すると、


キヨ 「なぁ、なんで泣いてんの」


もう居なくなったと思っていたキヨ兄が、少し力を入れて私の手を掴んだ。

驚いたけど、何とかなんでもないと言う。

『な、泣いてなんか…』


キヨ 「じゃ、何で手で顔隠す」


『……』


キヨ 「俺に自惚れても良いって言うなら、お前の図星指すけど」


どう、と私の顔を覗き込みながら言うキヨ兄。


『…自惚れて、良い…』


何とかそれだけ呟いてキヨ兄を見ると、キヨ兄は目を丸くしてから、ふっと笑った。


キヨ 「…俺の家、出たくねぇんだろ?」


と、明言通り私の図星を容赦なく指した。


キヨ兄の手が、私の手から髪へ移り、そして頬へ移る。


キヨ 「誰も居て悪いなんて言わねぇ。お前はもう少し我儘を言え」


キヨ兄は優しく誘惑するような声でそう言って、つ、と私の涙の筋を辿った。


『……っ、き、よにい…』


その優しい声と華奢ながらも大きいその体に、今すぐにでも縋ってしまいたい。


子供の頃のように抱き着いて、ここに置いてと泣き付いてしまいたい。


一瞬、本当にそうしようかと思った瞬間__



“キヨくんね、彼女さんいるのよ”


お母さんの声が聞こえた。

まるで私の心を読んでいるように。


私はもう一度キヨ兄を目だけで見上げると、小さく深呼吸した。


そして、



『…ううん、私、ここを、』


一際大きい涙の波が来て、ぼろりと決壊する。


『出ていく』


私の頬に触れていたキヨ兄の指が、静かに離れていった。

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蘇澳(プロフ) - けろさん» コメントありがとうございます!とても励みになりました!お目に入れて頂き光栄です!これからも更新がんぱりますので宜しくお願いします^^ (8月30日 16時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
けろ(プロフ) - 初めまして!毎回更新を楽しみにしています(^^)居候生活編も楽しみに待ってます笑小説書くのは大変だと思いますが応援しています! (8月30日 12時) (レス) id: 2aaeade905 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年8月12日 23時

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