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三話 ページ3

云須side



目が覚める。
冬の朝、ツンとした空気が鼻を刺す。
体を包んでいた布団を引き剥がして、特にこれといった朝食をとるでもなく仕事着に着替えて外に出た。

兄が亡くなって三年が経っていた。

俺ももうかなりの歳になり、本来の女としては結婚のピークを超えている。だからなんだという話ではあるのだが。

今日は本家に用がある。

まだ戸籍上は死んだことになっていない。情報は時雨から流してもらっている、そこは心配ない。

あれから俺は階級を特級まで上げたが、その後すぐに術師を辞め、姿を隠している。おそらく本家にもそのことは伝わっているだろう。


「また痩せたか」

『知るか。戸籍は』

「いつでも消せる。いいんだな」

『存在を証明するものは全部邪魔だからな。家の金は払う、名前を借りてるし。あと、仕事は平日の三日間だけにしてくれ』

「夜中な」

『ああ』

「…ほんとにそっくりになりやがったな」

『双子だったからな、当然だ』


あれから声を低くする努力をした。
男らしくする癖をつけた。
髪も短くした。
言葉遣いも兄さんを真似た。
男物の服を着て、呪霊を飼い、武器を集め、強くなり続けた。

姿であれば瓜二つだろうが、一つ違うとすれば兄さんと同じ位置に大きな傷ができたくらいか。

時雨の大型車で本家のすぐ近くまで送ってもらい、途中で着物に着替えて、実家の門を潜った。すぐに家の連中が武器やらなんやらを構えて出てきたが、俺の姿を見て亡霊でも見た顔をする。

そらそうだろうよ。
死んだはずの男がここにいるのだから。


『そこを退け。お前らなんぞに興味はねぇんだ』

「な、なぜ、お前は死んだはずだ!!」

『邪魔だってのがわからねえか』


圧に耐えかねて連中は道を開ける。
やがて所々の部屋から顔を出したり、視線だけをよこしたりと、見つめはせども道を塞ぐことはなく。

気づけば当主の部屋の前に立っている。

俺が本当に俺になる日が来た。



.

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ツバメ - なんか甚爾が居ないのを前提にしてるからそこは凄くさびしいけど、彼女の意思と決意が強すぎてつい本人みたいに引き込まれてしまいそうです (2021年7月27日 23時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - クレイさん» 応援ありがとうございます、期待に応えられるよう精一杯やります!! (2021年3月11日 20時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
クレイ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月11日 20時) (レス) id: a6777d967f (このIDを非表示/違反報告)
黒野麻陽(プロフ) - てる。さん» コメントありがとうございます!できるだけ面白く書けるように頑張ります!! (2021年3月5日 15時) (レス) id: 53793cef18 (このIDを非表示/違反報告)
てる。 - 話の中に凄い引き込まれました。一言ではいい表せませんが、言葉が見つからない…!更新、楽しみに待ってます。 (2021年3月5日 14時) (レス) id: 5ec2a8a618 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒野麻陽 | 作成日時:2021年2月17日 22時

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