漢気溢れる男の子3 ページ25
水瀬ひなこ「よ、ようこそ!えーっと、や、や……」
薬研「薬研藤四郎だ。」
水瀬ひなこ「薬研。ごめん、ちょっと緊張しちゃってて…」
薬研「みてえだな。」
テンパる私に薬研は眉を少し下げてちょっと困ったように笑った。
薬研「俺たちはただの刀だ。まあ、今はなぜか人になってはいるが……道具である俺っちに緊張する必要なんかねえよ。」
(道具……。)
強い違和感を感じる。
水瀬ひなこ「違うの。そうじゃなくて…。」
私は思わず即座に声をあげてしまった。
水瀬ひなこ「私ね、昨日審神者になったばかりで、何もかもが未熟なんだ。心細いし…。今はあなたのほうが不安だろうけど…。とにかく、私はあなたをただの道具としてじゃなくて、対等な関係でいたいの。」
(そうだ、そういうことだ。)
口に出して自分の考えがまとまった。
私が絶対の立場として、皆を率いるのは、私にはとても無理。
戦の仕方もなにもわからないし、そういう形が取れる器じゃない。
きっと私はそういうのは合わない。
なら、お互い対等で、協力しあう形をとるべきだ。
道具としてではなく、この未知の状況に置かれる仲間として。
水瀬ひなこ「あなたはこれから歴史を改変しようとする化物と戦ってもらうことになるけど、私は戦の仕方がわからない。でもあなたは戦を見てきてるでしょ。だから、私が間違えそうな時は止めて欲しいし、教えてほしい。」
そこまでいうと、薬研は少しだけ目をそらし、考える様子をみせた。
すぐにパッと私に視線を合わせると、
薬研「……大将がそれを望むなら、俺っちはそれに従うぜ。」
そういった。
__ちょっと作り笑いのような笑みを浮かべて。
水瀬ひなこ「あ、ありがとう。」
でも私はその薬研の様子にその時は気づけなかった。
こんな頼りない私に理解を示してくれることにうれしさを感じ、少し浮かれていた。
この時私はまだまだ甘ったれていた。
____現実が見えていないことに気づくのは、すぐ先のことだった。
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作者名：PANANA | 作成日時：2020年12月19日 8時
