人一年生4 ページ15
気づけば、空はもう茜色。
私達は本丸探索を終え、台所にきていた。
審神者になって初めての、夕飯作りだ。
加州「主ー、お皿はもう用意したよ。次はどうすればいい?」
水瀬ひなこ「じゃあ次はそこにあるしゃもじでご飯をよそってもらえる?」
加州「しゃもじって、これでいいの?」
水瀬ひなこ「そうー。」
始めて触れる道具の数々にまだ慣れない加州に私は指示を出しながら、人としての生き方を少しずつ教えていく。
まずは生きるのに欠かせない、食事の用意の仕方から。
水瀬ひなこ「よし、準備完了!」
キッチンにあった木製のテーブルの上に、白飯、焼き魚、豆腐のお味噌汁を載せて、加州と席につく。
水瀬ひなこ「じゃあ、食べよう。…いただきます。」
そう手を合わせると、加州も真似て、戴きますと手を合わせる。
箸をもつと、加州もオズオズと箸をもち、私が食事を始めると、加州も真似て白米を口にした。
もぐもぐと、口を動かせば、加州も同じようにもぐもぐと口を動かす。
加州「…美味しい。」
ごくんと飲み込むと、加州はハッとした顔を向けながらそういった。
水瀬ひなこ「良かった。沢山あるから、好きなだけ食べてね。」
そういえば、加州は口に食べ物をリスみたいに入れて、嬉しそうにうなずく。
しゃもじがわからなかったぐらいだから、箸の使い方は難しいだろうと思ったのに、それは問題ないみたいだ。
(日本刀だからかな?)
そんなことを思ってると、ボリンボリンと、変な音がして、驚いた。
水瀬ひなこ「わわわ、加州、魚のホネは食べちゃだめなんだよー!」
慌てて止めるが、時に既に遅し。
加州「えっ。そうなの?普通にたべちゃった。」
水瀬ひなこ「あららら…」
華奢な見た目とは裏腹、中々ワイルドな刀みたいだ。
あ、今はもう人なんだけど…。
水瀬ひなこ「魚の骨は喉に刺さりやすいから、食べる前に取り除かなきゃだめなんだよ。こうやって…」
そういいながら、まだ手をつけてない私の魚を見本に、魚の食べ方を教える。
日本男児なるもの、魚の食べ方は食の基本中の基本であるべきである。
加州「お〜。すごいね、主。」
水瀬ひなこ「ふふふ…。」
加州は私の手元を真剣な眼差しでみたあと、感嘆したような様子で褒めてくれた。
こんな小さなことで喜んでくれるから、なんだかむず痒くなっちゃう。
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作者名：PANANA | 作成日時：2020年12月19日 8時
