はじめまして5 ページ11
加州はそんな私の反応をみて、困ったように眉を下げ、口元には笑みを残したままいう。
加州「別に謝ることじゃないって。それよりさ、ここのこと、俺に教えてよ。俺はなんで人にされたのか、とかも。」
水瀬ひなこ「うん…教えたいのはやまやまなんだけど、実は私もあまり詳しいことはまだ説明されてないの。ただ、私は刀を人に変えて、時間遡行軍っていう、歴史をかえる怪物を倒すために、各時代に送り込む力があるらしい、ってことしか…まだ…。」
加州「“らしい”って？」
水瀬ひなこ「そのままの意味だよ。私は今まで戦いとは無縁の世界で生きてたの。だけど、今日いきなりこんのすけに審神者になれっていわれて、ここについさっききたばかりなんだ。あなたを人にしたのも、こんのすけがあらかじめ用意してくれた札をつかっただけで…。」
そう言葉を濁し、ちらりと加州の反応をのぞきみる。
ああ、どうしよう。
加州の表情がすこしずつ固くなって、笑みが消えていっている。
(そりゃあそうだよね。刀から人に姿を変えられただけでも多大なストレスが掛かりそうなのに、唯一頼れる主がこんななんて…)
特別容姿が秀でてるわけでもなく、戦なれしてるわけでもない。しかも、私の意志ではなく、むりやり審神者にされているようなやる気ない人が自分の命を抱えてるとか、普通、ショックどころか絶望するよね…。
気持ちを察して、私まで暗くなってくる。
(そしてこの沈黙……うぅ、辛い……)
水瀬ひなこ「で、でもね!私、すっごい頑張るから。加州が安心して私に命とか、預けれるように…、私が加州を守れるように…！」
あまりの気まずさに耐えかねて、言い訳のようなことをくちばしってしまった。
私にそんなたいそうなことを成し遂げられるかなんてわからないのに。
……むしろ、可能性はめちゃくちゃ低いくらいなのに。
加州「………。」
呆れられたのかな。でもしかないか。私、こんなだし。
もうなにしてもだめな気がして、一人で勝手にネガティブになっていく。とても審神者就任初日！とは思えない暗さだ。
加州「守る……ね。」
うじうじする私の目の前で、加州はぽつりとつぶやいた。
加州「俺の新しい主はかっこいいね。」
水瀬ひなこ「っ………！」
ふいにむけられた、優しい目に、胸がちょっと締め付けられた。
ドキドキして、温かい気持ちになる。
(かっこいいのはあなたのほうです…)
そうして私は、審神者としての人生を歩みはじめたのだった___。
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作者名：PANANA | 作成日時：2020年12月19日 8時
