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昼に設定したアラームが鳴り、ゆっくりと起き上がった。もうお昼か。そろそろ活動しなければ。
陽が上って日差しが差し込んでいるせいか、部屋が朝よりずっと暑い。条件反射のようにクーラーを付けて、パソコンに向かった。あと24時間。うーん、追い詰められてきた。
パソコンに向かって早々デスクに突っ伏してやりたい衝動に駆られるが、気合いを入れ直す。全く進んでいない訳ではないのだ。なんとかなる。そう言い聞かせるように、いつものように呟いた。
今の原稿が上手くいかないのは理由があった。
基本、私はなんでも書くようにしている。言い換えれば、仕事を選んでいる余裕が無いからだ。今はかろうじて文字を書いて生活できているが、それは神谷がマンションに住まわせてくれているのだって大きい。まだまだ私は売れない作家で、だからエッセイでもコラムでも短編小説でも脚本でも書くしかないと思っている。それでも苦手な分野はあるもので、今回がそれだった。
「恋愛か……」
とあるレディースコミックをノベライズするのだという。その依頼が来た時は嬉しかったが、原作の漫画を読んでその甘さにひっくり返った。嘘だろ……こんな漫画みたいな恋があるわけ……いや漫画かこれ……なんて動揺してしまった程だ。書くにあたって全巻読んで家にも持って帰ってきたが、仕事と言えど神谷に見つかったら恥ずかしかったので、厳重にダンボールで保管した。
今回はベースがあるのでそこまで困難という訳ではないし、恋愛について書くのは楽しいと思う。
ただ楽しいだけで、本当は恋愛のことなんて何も分かっていなくて、私が書くのは絵空事の、こうだったらいいなという理想みたいな文だ。運命の出会いなんて今更信じる歳ではないけれど、もっと素敵な恋が私の知らない場所にはあったりするのだろう。そんな自虐にも似た思いと、どうしてもちらつく1人の姿が、キーボードを叩く手を止めていた。
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美桜(プロフ) - 続きがとても楽しみです!^^* (2023年1月26日 11時) (レス) @page16 id: 3c71fa7893 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 12話に誤字がありました。「操作資料」ではなく、「捜査資料」です。 (2019年9月22日 22時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:依香 | 作成日時:2019年9月15日 3時