夜の使者【鬼滅の刃】

漆 ページ10

｢もう、教えることはないよ、A｣


｢えっ？｣





あれから2年、Aは随分と成長した。

身長も伸び筋力も見た目では測れないほどついている。見てくれでわかる程筋肉はついていないし腹筋も6つには割れてないが同じくらいの筋力を持っている。

すっかり硬くなった手のひらは立派な剣士である証拠だ。





｢呼吸法や戦闘法、精神的な面でも教えられることはもうないよ。常中も身につけて、これからはA次第だ。｣





穏やかな笑みは聖母のようであった。嬉しさのあまりにAはほろりと涙を零す。






｢最終選別でも、大丈夫。安心して送り出せるよ。はい、これ。｣


｢これって....｣






詠が渡したのは卍型の鍔がついた夜空の刀に同じく夜空色の羽織であった。曰く、それは詠が鬼殺隊に所属していた時に使用していたものであるらしい。






｢いいんですか....??｣


｢勿論だとも。僕には刀が2本あるし、その羽織は僕の意志を受け継ぐ為に貰って欲しい。あとこれ、僕の手作りだけど....｣






金の糸に青の石がついた組紐であった。金の糸は黒に近い紺の髪によく映える。付いている青い石は通称“ラピスラズリ”。和名は瑠璃とも呼ばれていて石言葉は“永遠の誓い”。尤も、詠はそんなこと知りもしないが。瑠璃の石が単に好きなだけだ。






｢....!!絶対に、大事にします....!｣






髪にさしていた簪を取り、組紐で髪を縛る。慣れない組紐は艶やかな髪を縛るには難しく纏まらずに落ちてしまう。諦めたAは前髪の横は流して縛ることにした。






｢うん、やっぱり似合うと思った｣






瞳と同じ金色はAによく似合っていた。髪の間から見えるうなじは新鮮であった。Aはあまりに嬉しくて口角が上がりっぱなしだ。予備で貰ったやつも他のものに付けようと、自慢する気満々である。






｢詠さん、お世話になりました....!｣


｢いいえ、A。言うことが違いますよ｣


｢？｣





｢“行ってらっしゃい”｣


｢！“行ってきます”｣






抱えきれないほどの愛情を、幸福を詠は与えてくれた。Aは生きていい理由がある、生きて成したいことある。いつかこの恩を返す為に。









＿＿＿＿｢ただいま｣と言うために。




+・+・+・+


《大正コソコソ噂話》

詠は二刀流です。器用に刀を振るう姿は舞のよう。でも時々投げたり咥えたり 笑

1本でも戦えますし柔軟性はありますがいつも担当刀鍛冶さんをぷりぷりさせてます。

捌→←陸

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