Story 144 ページ39
長い年月が経った
あの男の子はしっかりと成長して一人前になった
街に出かければ、広告塔やコンビニにポスターがあったり
隣を歩く女の子たちからその子の名前が出てくると、誇らしく思えて
テレビをつければ苦労人だったのだと
あの子には才能が有り余っていたのだと
当時知ることのできなかった事を今になって知る時が来るとは
いつの日か男の子は遊びにきてはくれなくなって
たまたま会った公園で声をかければ「お母さんが悲しむから」と
お母さんが羨ましく思えたのは事実で、だけれども「守りたい」と確かに言ったあの小さな男の子の意思は当時から強かった
あれから毎日のように公園に来ては男の子がいるかしらと、少し探してみたり
いれば少しベンチに腰掛けてお話ししたり
以前みたいに家に遊びには来てくれないけれど、それだけで嬉しかった
小さな男の子には抱えきれない重荷を少しでも軽くしたくて、なんて言えばいいように聞こえるけれど、キラキラと笑ってくれる男の子をいつまでも見ていたかった
年老いて時間が有り余っている私は毎日、時間があればそこに行った
もう来てくれない
行ってもその子はいない
そうは分かっているけれど、その面影だけでもと足を運んだ
それは今日も同じで、それが日課だったから
黄色いベンチに腰掛ける青年は確かにあの子
決して小さくはないけれど、それだけはすぐに理解できた
彼は覚えているかしら
駅で一度会ったこと
彼は覚えているかしら
私の顔を
あの頃よりもしわくちゃで、しっかりおばあさんになった私を
『…これ』
なんと言うことのない会話をして彼が渡したそれは、私があげたキーホルダー
少し
まだ持っていたのね。そう口が動こうとする
『…あげます』
「え、でも…」
遮った声に大切にしていたスノードームが割れた時みたいな感情が湧き上がる
『本当は、それをくれた人に会いたかったんだけど』
しばらく話した後
私は何も言えずに「そうなのね」としか言えなかった
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弟丸。(プロフ) - 更新再開とても嬉しいですまた最初から一気読みしてきましたかなたさんのペースで更新していただけると幸いです主人公くんと他グルメンバーとの絡みが大好きです (2020年11月28日 22時) (レス) id: 6fd7fc297b (このIDを非表示/違反報告)
あす - とても素敵な作品です。MJさんとまた絡むかな?なんて期待もしながら読んでました。夢主さんが考えてることは、とても深くて興味深いです。自分に置き換えて読むと言うより、夢主さんをアイドルとして見ていて、気がついたら普通に推してます。ゆっくり長々すみません。 (2019年6月10日 23時) (レス) id: d45d13a6de (このIDを非表示/違反報告)
酢(プロフ) - この作品が大大大好きです!!更新楽しみにしています(*^^*) (2019年5月12日 12時) (レス) id: 55af053cbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かなた | 作成日時:2018年12月27日 23時