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Story 76 ページ16

『僕と一緒に住もうよ』



その言葉に母様はびっくりしたみたい


「何を言ってるの」

『僕、今は母様を支えられるぐらい頑張ってるんだよ?』


毎月母様に渡してるお金に手紙を入れたんだ

読んでくれた?

一緒に住もうって



『あいつの居る所に帰らなくてもいいんだよ?』



「!!!あいつなんて、呼ばないでッ」



ビク


缶コーヒーを握りしめる手は小刻みに震えていた

その言葉が嘘だと信じたい


僕と母様をこんな風に引き離したのはあいつだ


どんなに母様が僕を嫌おうが

僕は母様が好きな僕で居続けたのに



母様は騙されてるんだ



「...お金の話も、手紙の話も知らないわ」

「そんなでっち上げた話で、あの人を悪く言うなんて許さない」


「悪い子ね」



『...ッ』



ああ、そうか

母様は僕よりもそいつを選ぶんだね



『母様は分かってないんだよ、あいつがどんな奴か』


僕があいつにどんな扱いを受けていたのか

あいつが母様に何をしていたのか

忘れてしまったのだろうか



『母様、僕と来てよ』

「...私が来たのは貴方が必要だからよ」



「私と来て、あの人と三人で一緒に暮らすのよ」

ここを離れて田舎に引っ越しましょう

三人で幸せに暮らせるわ



目をつぶり

眉間に皺をよせ

吐き捨てるようにそう言った母様は

怯えているようだった



『何に怯えてるの?』

「...何を言っているの」




そう言って立ち上がった母様は缶コーヒーを飲み干して

「私、缶コーヒー苦手なのよね」

そう言って鞄の中からきらりと光るものを見せた



『母様はそれで幸せなの?』

「...幸せよ、貴方に必要とされるよりも。あの人に必要とされた方が私は幸せなの」



必要とされることに執着している

必要とされることを生きがいにして、自分の価値を見出しているのだろうか


そんなもので、自分の価値が決まると思っているなんて



『馬鹿みたい』

「!?...Aが私にそんな口を聞くようになるなんて」




「本当に悪い子ね。お仕置きしなくちゃ」





室内灯に反射した光が瞳に飛び込んできた

お腹にどっしりとした圧力を受け、じんわりと熱を帯びてくる


救いの手を差し伸べても決してつかまない


蜘蛛の糸にみんな縋ろうとするのに

母様は見向きもしない




母様がそうしたいのなら受け止めよう



『母様、逃げて。誰にも見つからない場所に』


「...あ、わたし、なんてことを」



『はやく行けよ』


ごめんなさいそう言って母様は走って行った

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からすみ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!この作品が本当に好きで、何度も読み返しています。これからも楽しみにしています!応援しています! (2018年12月15日 0時) (レス) id: 224d9dadf0 (このIDを非表示/違反報告)
かなた(プロフ) - Haylee :Dさん» そう言って下さると励みになります!!亀さん更新になりますができるだけ書くつもりなので、楽しみにしておいて下さるとあり難いです!!! (2018年6月5日 21時) (レス) id: 98d994049d (このIDを非表示/違反報告)
Haylee :D(プロフ) - はじめまして。とても面白くて一気に読んでしまいました!これからも更新楽しみにしています。頑張ってください!次の展開が気になって気になって仕方がないです。 (2018年6月5日 9時) (レス) id: 0356daf5fa (このIDを非表示/違反報告)
かなた(プロフ) - 白さん» ありがとうございます!遅くなりました! (2018年6月4日 23時) (レス) id: dd58b3a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
かなた(プロフ) - ゆずさん» 遅くなり申し訳ございませんでした!! (2018年6月4日 23時) (レス) id: dd58b3a5d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かなた | 作成日時:2017年9月23日 12時

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