アイドル失格 FileNo.3

Story 75 ページ15

事務所について暫くして代表と話そうと控室から出た時




「A...私を覚えてる?」


大好きな声が聞こえた

振り返るとそこには母様が居て


でも、やつれた顔に焦点の合わない瞳が僕を捉えていた


怖くなった


『母様、どうしてここに』



そう言うと母様は顔を歪めて

「その顔をやめて頂戴」

といった






僕はいま、どんな顔をしているんだろう



「...あんた。あんた覚えてる」


そう言って指さしたのは僕の隣に立っているマネヒョン

ああ、不味い


MN「...Aのお母さん、ですか?」

「何よその態度、私からAを奪っておいて...あなたは」



「どうして!!!そんな顔をしているのよ!!!ムカつくムカつく!!」


MN「...お母さま、落ち着いてください」



母様に近づこうとするマネヒョンを止めた

今の母様に近づいたらヒョンがどうなるか分からない


この母様には見覚えがある


僕が服を汚して帰った日、テストで100点をとれなかった日

怒って手が付けられなくなった



『マネヒョン、ごめんだけど先に行ってて』

MN「ひとりで大丈夫か?」

『...大丈夫です。僕の母様なんだから』



そう言うと心配そうな顔をして代表の元に向かっていく

それにつっかろうとする母様に近づいてそっと抱きしめた


久しぶりに母様に抱き付いた

以前より僕が大きくなったからか、母様が小さくなったのかは分からなかったけど

母様が細く感じた



『母様、あっちで話そう』

「...そうね」



少し落ち着いたらしい母様は、抱きしめ返すことなどなく

だらりと腕を下げて僕に引っ張られている。


どうやってここまで来たのだろう

受付の人はどうしてるんだ


警備が鳴ってないからこんなことになるんだ





近くのベンチに腰かけて、自販機でジュースを買う

僕はホットココアで、母様は缶コーヒー


『これ、』

「...こんなに暑いのに、ホットなんて」

『母様も好きだったでしょ』

「そうだったかしら」





『母様、どうして突然会いに来たんですか』

「...母親が突然会いに行くなんて普通でしょ」




母様はもうろうとした瞳で、缶コーヒーを見つめて一言


「私の元に帰って来て」

そう言った


その言葉が嘘か誠かなんて、とうに分かっている

それなのにどうして僕は



「あなたが私に必要なの」



『知ってるよ』


逆らえないんだ。

でも、沢山の人とかかわって分かったじゃないか


自分の事は自分で決めなくちゃ



『母様、僕の家に一緒に住もうよ』

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