アイドル失格

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スタッフに声をかけられて足を運んだ先

きらびやかな衣装を着た人たちがぞろぞろと降りてくる

人数多いなと思っていれば、ふと目が合って慌てて頭を下げた。


今日初めて、スタッフさん以外の人に頭を下げたきがする

ヤンキーとかそういう事じゃないよ?

ただ、挨拶する機会がなくて。


「Aさん入ります」


イヤモニを付けてマイクを通して話すスタッフの声に、体が少しづつ硬直していく感覚がする。

ピョンピョンと軽く飛び跳ねて、誘導されるがままステージの脇に立つ


あー


黄色い歓声、かしわ手を打つ音が鮮明に聞こえる。


スタッフに渡されたイヤモニを耳にはめ、音の調節をしてもらう



ステージの真ん中に立つ、マイクで「さて、次は〜」と軽快に話しているのはTVで何回も見たことがある人

あの人が僕の名前を呼んだら、僕はステージに立たなければならない。

一生呼ばないで

そこで、僕が死ぬまで話しててとか、思ってしまうけどそんな事が叶うはずがない。


「A！ おー素敵な名前ですね」

「今日がデビューということですごく緊張しているでしょうね」

「皆さん、暖かな目で見守ってあげてください」


普段の僕なら、気の利いたこと言うなとか
この人面白いな〜といつも思うけど…

今日は、彼の話す言葉すべてが僕を煽っているようにしか聞こえない。

あなたは僕の親でも何でもないんだから、暖かな目とか言わないで

お互い、挨拶もしたことないのに何なのこの人。と、苛立ちさえ覚える。



『はぁ』



小さくため息をつけば、リラックスですよ。なんて、隣にいたスタッフさんに声をかけられる。


小さく返事をして、マイクを握りしめた。



ステージの明かりが落ち、静まり返る客席。

中央部に立つとスポットライトが当たって曲が流れ出した。



痛い視線


暑いライト


いくつもの目が僕を捉えていて困惑する



「暖かな目で見守ってあげてください」


頭に流れた言葉に不思議と、胸のうちが滾る

情けないほどに、僕はこの言葉に闘士を燃やしていた。

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