探偵社の自称最強異能力者さん【文豪ストレイドッグス】

うつくしき人は寂として石像の如く＿＿参 ページ14

江戸川「社長……」


国木田「申し訳ありません。業務が終了次第、谷崎と情報を集めて＿＿＿」


福沢「＿＿＿必要ない。全員聴け！新人が拐かされた。全員追躡に当たれ。連れ戻すまで、現業務は凍結とする」


社長は本気なのか？新人にそこまでしてやる義理なんて無いはずだ。それより今の業務を優先するべきだ、絶対に。


国木田「しかし、幕僚護衛の仕事が……」


福沢「私から連絡を入れる。案ずるな、小役人を待たせる程度の貸しは作ってある」


社長までこの理屈を理解していないなんて……全く本当に困った奴らだ。


江戸川「社長、本当にいいの？」


福沢「何がだ、乱歩」


江戸川「何がって……理屈で言えば＿＿＿」


福沢「＿＿＿仲間が窮地。助けねばならん。それ以上に重い理屈がこの世にあるのか？」


確かにその通りかもしれない……社長の真っ直ぐな目を見ると、僕は何も言えなくなってしまった。


福沢「国木田、三時間で連れ戻せ」


国木田「……はっ」


腑に落ちない。


僕は絶対に助力なんかしてやらないからな。



………＿＿＿＿＿




社長の指示で敦の捜索が本格的に始まり、探偵社はより一層騒がしく忙しない雰囲気が漂っていた。


暇潰しにここ最近起きた殺人事件の推理をしていたが、それもすっかり飽きてしまう。


どんな事件も、僕にとっては簡単すぎるのだ。


＿＿＿しかし、どうしてだろうか。


悔しいことに、今僕の中にはたった一つだけどうしても分からない謎があるのだ。


分からない……というか、確証が持てない謎だ。


江戸川「ねぇ、A」


「ん？なんですか、乱歩さん」


江戸川「列車内の奇襲の時のことなんだけど、どうして君だけは無傷だったの？与謝野先生の治療があったとはいえ、君、服さえも一切汚れていなかったよね」


可笑しいのだ。確かにAは弱い。最弱だ。


聞いた話によると、あの日Aはほとんどポートマフィアと対峙はしていないという。


だが、それでもだ。


あんな大きな爆発があり、敦は出血多量による瀕死状態。


近くにいたAは、少しは服が汚れていてもいいはずなのに、何一つ汚れはついていなかった。


「あぁ、逃げたんですよ、中央車両に。なんか怖くなって」


江戸川「……まぁそうだよね」


この反応、嘘をつい＿＿てはいなさそうだな。


これ以上詮索しても無意味だな、Aは逃げた……それだけの話だ。


余計なことはやめにして、新聞に載っている四コマ漫画でも見ながら暇を潰すことにした。

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