嫌いじゃない ページ10
『消太、次あれ食べたい』
相「落ち着けって、走ると危ない」
『はやくはやく』
数年振りに来た祭りは、色鮮やかな提灯と賑やかな祭囃子で、薄れていた記憶が鮮やかなものに塗り変わっていく。
綿あめにクレープ、りんご飴にかき氷と、
雰囲気もあるだろうし、久しぶりというのもあって子供みたいにはしゃいでいた。
あれもこれもと色んな屋台を見て回る。
『次あれ見たい！』
相「分かったから。ほんと、いつもは大人しいのにな」
消太に苦笑され、我に返ってはしゃぎすぎたと自重する。それすらもお見通しなのか気にするなと手を引かれた。
相「次はあれだろ」
『…、うん！』
優しく繋がれた手を、強く握り返した。
─────
──
『そういえば、消太が個性使ってるところ初めて見た』
2人並んで境内まで歩き、ふと思い出した。
個性は知っていたけど実際目にした事は無かったから。
相「個性の使用は禁止だし、必要なかったからな」
どこまで行くのかと思いながら、神社の階段まで来て消太がそこを軽く手で払う。ほら、と促されて座り、その隣に消太も腰を下ろした。
一息付く横顔を、じっと見つめる。
『…もう一度見たいって言ったら、いや？』
相「個性は嫌いなんだろ」
『うん…、嫌い。でも、』
個性は嫌い。ヒーローも敵も嫌い。
みんな…大嫌い。それは変わらない。
だけど、
『消太の個性は、…嫌いじゃないの』
知りたいと思うくらいには。
見てみたいと思うくらいには。
消太は何かを考え込んでるみたいに皺を寄せて、あまり良い顔はしてなかった。
嫌なら大丈夫と、その言葉が出そうになった時に消太からため息が零れて、頬に手が触れて消太と向き合う形になる。
突然の事で、体と思考が停止した。
相「…。…怖かったらすぐに言ってくれ」
言葉の意味を理解する前に、周りの空気が変わった様な気がする。
いや、実際変わったのかもしれない。
そして言葉の意味を、少しだけ理解した。
髪が逆立ち揺れて、黒かったはずの消太の瞳が赤く光ってこちらを見つめている。
薄暗い中で光る瞳は、誰かにはきっと怖いのかもしれない。
私も少しだけ驚いたから。
でもそれは一瞬で消えてしまった。むしろ、
『…こっちの方が、顔がよく見えるね』
怖くなんかない。
真っ赤なビー玉みたいで、きれいだった。
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ムツキ(プロフ) - 面白かったです！続き楽しみにしています！ (2022年5月22日 13時) (
レス) id: 82e68addf8 (このIDを非表示/違反報告)
シュリ(プロフ) - りのさん» りのさんコメントありがとうございます(*^^*)更新遅れてしまいすみません(--;)次回も楽しみにして頂けたら幸いです！ (2021年11月19日 20時) (レス) id: 6347914aa2 (このIDを非表示/違反報告)
りの(プロフ) - 更新嬉しいです！これからも頑張ってください！ (2021年11月17日 18時) (レス) @page45 id: ded004bcdf (このIDを非表示/違反報告)
シュリ(プロフ) - うみさん» うみさんコメントありがとうございます(*´ω`*)続きが楽しみと仰っていただいてとても嬉しいです！更新が遅れていますが、なるべく早く掲載できるように頑張ります！ (2021年9月20日 14時) (レス) id: 6347914aa2 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - すごく面白くて続きが気になります。お忙しいでしょうが更新頑張ってください。楽しみに待っています。 (2021年9月17日 20時) (レス) id: 9b9e486fdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シュリ | 作成日時：2020年4月7日 22時
