五十三 ページ8
彼がいるであろう部屋の扉を控えめにノックする。
伏黒「…?A?どうし…っ!?」
中から出てきた彼を抱き締めた。
伏黒「A!?…は??」
何か言わなければ恵を困惑させるだけなのに、どう頑張っても私の口から出るのは泣き声だけだった。
恵は何も言わずに部屋に上げてくれる。
伏黒「落ち着くまで無理に話そうとしなくていい。…それに話したくないなら話さなくてもいい」
恵の言葉に頷く。
結局私の行いは不問に付された
理由としては上層部にこの話が伝わっていなかったことと、死人が出なかったこと、そして当主が私の母を手にかけていたから。
上層部に話が伝わっていないのは、多分夜蛾先生が手回ししてくれたからだろう。
『私、お母さんに何も言えなかった。次に会ったら絶対感謝するって決めてたのに』
その機会はもう2度と訪れない。
母の笑顔を見ることはもうできない。
私が何も知らずに生きている内に母は死んでしまった。
せめて最期を看取るくらいしたかった。
きっと母は最期まで1人だった。
そう思うとあの当主を殺さなかったことに対して後悔する。
あの時五条悟は何を思っていたんだろう。
『恵』
伏黒「ん?」
今の私の言葉で母が死んだということくらいしか分からない筈なのに、恵は優しく聞き返してくれる。
『辛い』
伏黒「…うん」
『蒼社の奴らなんか大嫌い』
伏黒「………」
『そんな奴らと同じ血が流れてる自分も大嫌い』
伏黒「……俺は好きだよ、Aのこと」
『!』
驚いて恵を見れば“酷い顔だな”と笑われた。
伏黒「血とかそんなのどうでもいい。AはAだろ」
『っ……恵は…やっぱり甚爾と違って優しいや…』
再び涙が溢れてしまい、それを誤魔化すようにわしゃわしゃと恵の頭を撫でる。
伏黒「だから!!そういうのが子供扱いしてるって言うんだよ!!」
『……ありがとね、恵』
泣きながら笑えば、恵は少し恥ずかしそうに視線を逸らして。
伏黒「別に…俺は何もしてないだろ」
きっと恵がいなければ私は耐えられなかった。
…そして五条悟がいなければ私はあの時止まれなかった。
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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年12月1日 16時