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五条「アリス、蒼社って知ってる?」
ある日、悟が唐突にそんなことを聞いてきて。
『そこまで詳しくはないけど、五条家に昔から関わりがある家だと…』
五条家以外の御三家からはあまり良く思われていないことも知っていた。
『確か悟と同い年の子がいて…名前は…』
五条「A」
私が答える前に悟が言った名前は、明らかに女性のもの。
Aという名前を口にした悟はどこか寂しそうで、その時私は分かりたくもないことを分かってしまった気がした。
『どんな人?』
私の質問に悟は1度驚いて。
五条「Aのこと知りたいのかよ」
『うん』
蒼社Aのことを話す悟は、いつもの悟とは思えないほど、とても表情豊かだった。
許嫁である私のことは下の名前で呼んでくれないのに、蒼社の彼女のことは下の名前で呼ぶ。
その時点で私は彼の特別にはなれなかった。
悟の特別は、私が彼と出会う前から決まっていた。
そう理解した瞬間、蒼社Aという人間のことが憎く思えてきて。
『彼女は今も蒼社の家に?』
五条「いねぇよ」
『へ?』
五条「…1年前に蒼社の家を出たって聞いた」
悟の言葉を聞いて、私は心の底から安堵した。
良かった、私の居場所はなくならないと、彼の特別になれるのは自分だけだと思っていた。
高専に彼女が編入してくるまでは。
・
『さと……』
悟に会いに1年の教室に訪れた時だった。
あれは確か蒼社Aが編入してきた翌日だっただろうか。
五条「…多分、俺がAを好きだって思う気持ちはこれからも変わらない」
夏油「はは、悟からそんなまともな言葉が聞けるとは思ってなかったな。でもそれなら有栖院先輩はどうなる?婚約者だろ?」
五条「高専卒業して、それなりに自由になったら婚約は解消する」
絶対聞きたくなかった言葉が、悟の口からあっさりと零れて。
気付けばその場を後にしていた。
蒼社Aなんていなくなってしまえばいい。
彼女は悟のことを想っていない。
想っていたとしても、その気持ちは私の方が強い。
なのにどうして悟は私を想ってくれないのか。
分からなかった。
分かりたくもなかった。
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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年12月1日 16時