七十二 ページ27
『助けてくれてありがとう、悟』
五条「どういたしまして。あ、そうだ。これも言おうと思ってたんだ」
不意に何かを思い出したらしい悟に、私は首を傾げる。
五条「蒼社家は解体された。だから君はもう蒼社Aじゃない」
『………』
言葉が出なかった。
五条「あのクソ当主…いや元当主にお願いしたらあっさり承諾してくれてね。君の苗字も分かった」
彼の“お願い”はきっと私の知っているお願いではないと思ったけれど、それよりも私の苗字も分かったという彼の発言の方が気になった。
五条「緋月。それが君の本来の苗字」
『緋月…』
彼の口から発せられたそれはとても綺麗な響きを持っていた。
五条「Aにぴったりな綺麗な苗字だよね」
そう言って微笑む彼を見て、昔と同じような気持ちになる。
この感情を私は知っている。
忘れようとしたけれど、結局忘れられていなかったあの気持ち。
『悟は…私が悟のことどう思ってるか気にならないの?』
五条「…へ?」
彼は先程私のことを好きだと言ったけれど、私はそれに対して何も返していない。
普通であれば気になるところだと思うのに。
五条「Aは僕のこと嫌い?」
『嫌いじゃない』
自分でも驚くくらいの即答。
五条「今はそれで十分だ。…気にならないわけじゃないけど、聞ける立場じゃないし」
流石にそこは分を弁えてるよと悟は言った。
五条「もう今日は休みなよ。…硝子にも安静にさせるようしつこく言われてるからね。後日学長に色々聞かれるだろうけど、僕も同席する。あと僕が知ってることは先に伝えておくからそんなに時間は掛からないと思うよ」
矢継ぎ早に告げた悟はそのまま部屋を出て行こうと立ち上がる。
そんな彼の服の裾を握り、決して大きいとは言えない声で言う。
『…恵に会いたい』
私の言葉を聞いた悟は複雑そうな表情をする。
五条「…何それ、妬くんだけど」
『お願い』
五条「僕が君のお願いに弱いこと知った上で言ってる?」
それは正直知らなかったけれど、彼が意外と優しいということは、この短時間で改めて理解した。
悟は仕方なさそうに自身のスマホを操作する。
五条「恵?Aが起きたんだけど、……切りやがった…」
嘘でしょと通話を切られたスマホを見る悟に笑った。
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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年12月1日 16時