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七十五 ページ30

私が死にかけてから1週間。



昔と同じように蒼社の屋敷の縁側に腰掛け、流れていく雲を見送る。



蒼社という組織はなくなり、この屋敷は悟が買い取ったらしい。



買い取った後も手入れはされているようで、私が訪れた際も屋敷内は綺麗だった。



有栖院扇の所在は未だに掴めていない。



私は彼女に嵌められたのだと悟に言われた。



彼女のことは嫌いだけど、同情せずにはいられなかった。





五条「A」





私の名を呼んで当たり前のように隣に座った悟。





『どうしてここに?私行き先は誰にも言ってない筈だけど』




五条「なんとなく」





悟はそれ以上言葉を発することなく、私の隣で横になる。



昔と同じだった。



無言で雲の流れを見送る2人だけの時間。



口を開いたのは私。





『19年ぶりかな。こうやって2人で雲を見送るの』




五条「…そうだね」





長かったような、それでいて短かったような。





『あの日、悟と会わなかったら、私は今も人形のままだったと思う』




五条「どうしてそう思うの?」




『自由を知ったきっかけは悟だったから』





ぶっきらぼうで、冷たいけれど、不思議と嫌いになれなかった昔の彼。



嫌いになれないのは今も変わらないかと隣の彼を見て思う。





五条「A、ちょっとついてきて」





急に起き上がったかと思うと、さっさと中庭を歩いて行ってしまう彼を慌てて追いかける。



彼について行った先は、蒼社の裏庭。



一般的には中庭と同じなんだけれど、屋敷の裏にあるからということで私はここを裏庭と呼んでいた。





『これ…』





悟が立ち止まった場所にあったのは母の墓碑。





五条「ないよりはあった方がいいと思って」




『……ありがとう』





彼の不意な優しさに泣きそうになってしまって、悟られないよう堪えた筈の涙はポツリと地面に落ちて染みを作る。





五条「A…?」





私の泣き顔を見た彼は目を丸くしていた。





『ごめん…』





恵といた時に十分泣いたと思っていたが、そうでもなかったらしい。





五条「……そういえば昔も泣かせちゃったよね、僕がAのこと」





悟は懐かしそうに、申し訳なさそうに目を細めて、私の涙を指で拭った。

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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613  
作成日時:2020年12月1日 16時

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