十五 ページ16
彼は私を“蒼社Aだ”と認識した瞬間、その端整な顔を歪めた。
他人の目があるからか言葉にはしなかったけれど、その必要性がないくらいには分かりやすかったと思う。
『蒼社Aです。五条様の役に立てるよう頑張りますので、皆様もよろしくお願いします』
指示された通りの言葉、指示された通りの表情。
なんて滑稽なのだろう。
夏油「蒼社…」
家入「もしかして五条の…」
五条「黙れよ、硝子」
硝子と呼ばれた彼女は、はいはいと軽く受け流して頬杖をついた。
夜蛾「蒼社の等級は3級だ。必然的に悟や傑と組むことになるだろうから面倒を見てやれ」
五条「はァ!?3級!?」
夏油「悟、うるさい」
五条「いやだっておかしいじゃん。3級の奴が俺の役に立つ?無理に決まってんだろ」
甚爾の元にいる間でも五条悟の話は聞いていた。
強い彼からしてみれば、名目上3級である私に付き纏われるのは迷惑極まりないはず。
『五条様、お言葉ですが、何も役に立つのは戦闘中だけではございません』
後に続く言葉を予測してか、更に表情を歪ませていく五条悟。
五条「そういうの必要ないんで。他人の手なんか借りなくても自分で出来る」
彼に拒絶されて6年経った。
けれど彼は私が嫌いなままらしい。
私も彼に抱いていたであろう恋心は忘れた。
そうすることで辛くなる要因を減らせたから。
『…そうだとしても、です。万が一の時盾がいなければ、私達は呪術界にとっての要を失うことになってしまう』
言っているのは私自身なのに、しつこさに呆れた。
腹も立つ。
けれどそうしなければ母は死ぬ。
大切な人の為なら私は何だってやる。
それが愚かな人形のフリだとしても。
五条「お前いい加減…!!」
夜蛾「悟」
五条「チッ…」
幼い頃に目を奪われた綺麗な空色の双眸は、私ではなく窓の外を映した。
もし彼と笑いあえる未来があったのなら。
私は幸せというものを感じられたのだろうか。
『……少なくとも今よりは幸せだったな』
誰にも聞こえないよう呟いた。
1520人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茜雫 - 書いている世界観が好きで何度も読んでいるので閲覧数の15分の1は私かもしれないです笑 (2020年11月29日 22時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - 茜雫さん» えぇ!前作から見てくださっていたんですか!?ありがとうございます!とても嬉しいです…これからも面白いと思ってもらえるよう、無理せず頑張ります!コメントありがとうございました!! (2020年11月29日 18時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
茜雫 - 初めまして!続きを楽しみに読みながら…何度も読み返してます笑前作同様、とても面白い内容なので、続きが楽しみです!無理せず更新頑張ってください! (2020年11月29日 18時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - いーすとさん» コメントありがとうございます!世界観が好きだと言ってもらえて嬉しいです。前作とは少し違う感じに書きたいなと思っていたので…これからも頑張らせていただきます!!ありがとうございます!! (2020年11月29日 16時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
いーすと - なんか世界観がめちゃ好きです!これからも頑張って下さいね!読み続けます!! (2020年11月29日 15時) (レス) id: e22cc70c93 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年11月27日 21時