三十一* ページ32
雅side
最初から私達の関係は明白だった。救われる側と救う側。それだけ。
悟さんには婚約者がいる。なのに結婚しないのは私が未熟で心配になるからだと彼は言う。彼の優しさは今の私にとって酷く残酷なもので。
そんな優しさいらなかった。悟さんがもっと早く結婚していれば、婚約者がいると教えてくれていれば、叶わない恋なんてしなくて良かったのに。
彼の幸せの邪魔をしているのはやはり私だったわけだ。
五条「どうしたの?暗い顔してるけど」
『そうですか?少し父上のことを考えていました』
私は嘘をつく。でも悟さんは気付かない。気付こうとしない。私を信じているから。
五条「?あいつに何かされたの?言ってくれれば殴りに行くけど」
『人の父親を容易に殴るとか言わないでくださいよ』
私はいつものように笑えている?話せている?
五条「それだけAのことが大事なんだよ」
『………』
その言葉を素直に受け取っていいのか少し悩んでしまう。
彼の一番は薫子さんで、それが変わることはこれから先もないのに錯覚してしまうのは悟さんの声がどこまでも優しいから。
溺れてしまいそうになる。
『悟さん。一つお願いを聞いてくれませんか』
五条「Aからお願いだなんて初めてだね?何?なんでも言いなよ」
『はしたないとか思われるかもしれないですけど、その…私のこと抱き締めてもらえませんか』
五条「え」
悟さんは案の定驚いた表情を浮かべ、間を置いてから口を開いた。
五条「本当にどうしたの…?」
『なんとなく、です』
もう最後にするから。貴方を好きでいること、この屋敷に来て悟さんと過ごすこと、貴方の幸せを邪魔すること。
だから。
『お願いします』
泣きそうになるのを必死に堪えて笑みを浮かべれば、悟さんは納得出来ていない様子ではあったが、優しく私を抱き締めてくれた。
『…ありがとう、ございました』
私の病を治してくれて、死なせないと言ってくれて、大切だと思ってくれて。
もっと一緒にいたかった。
悟さんから離れて踵を返す。
五条「A……?」
『今日は用事があるので失礼しますね』
悟さんの返事を聞かないまま屋敷の外に出た。
○
○
○
『父上。隣街の殿方との見合いの話、受けてもいいですか?』
166人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
?(プロフ) - 今までで1番好きなお話に出会えて本当に幸せですㅠㅠ感情移入し過ぎて自分までもが懐かしい気分になってしまい不思議な感覚でした笑主様の文章力ありすぎて考察もしやすかったです、がち尊敬です!素敵なお話ありがとうございました🥹💗💗 (3月17日 7時) (レス) id: 0539db3d38 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» ありがとうございます…!次回作も楽しみにしていただければ…!!(o^^o) (2022年1月26日 17時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - 完結おめでとうございます!!!名作すぎるので何度も読み返します笑次回作も楽しみです!! (2022年1月26日 15時) (レス) @page42 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» えねごりらさんコメントありがとうございました…おかげさまで変な終わり方にはなりましたが完結できました…!本当励みになっていたので心からの感謝を申し上げますッ!! (2022年1月26日 1時) (レス) @page42 id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - すれ違ってる…切ないが溢れ出てます!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!更新お疲れ様です(о´∀`о) (2022年1月25日 21時) (レス) @page35 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2022年1月17日 20時