�� - 002 平安は外から来るのではない ページ32
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「私は………結局何も護れないのでしょうか、私は、また、妹を……
「そんなことは無い」
「また、救えないっの」
「違う。お前は強い」
思わず語尾に力が入った。
鱗滝は思う。まただ。またこの子は誰かの為に泣いている。
そんな人間になってしまっては、また護れなくては申し訳ない。妹が可哀想だから。天国で見守ってくれている家族に顔向けができなくなってしまう。悲しい。と言葉をボトボト、涙をぽろぽろ零しては肩で呼吸をする。
優し過ぎるんだ。だから心配なんだ。最終選別では己の命を第一に考えて行動しなければ合格どころか、命すら危ういのだから。
こうやって自分ではなく誰かの為に涙するばかりのAの生存率を考えてしまうと───辛いのだ。
「A。お前は優しい子だ。おおらかで穏やかで寛容だ。怒る時はいつも誰かのため、泣く時もいつも誰かのため、自分を労わった事がないだろう。儂はそれが恐い」
蚊の鳴くような声が「何故ですか」と問う。
鱗滝は右手のひらをAの後頭部に当ててさらに強く抱き締めた。
「お前が死んでしまわないかと思うと気が気ではない」
涙で濡れた瞳を丸くする。肩や頬に触れている鱗滝の身体が僅かに震えているように思えたからだった。
この瞬間ほんの少しの間、涙が止まる。
「もう誰にも死んで欲しくない。生きて欲しい。お前を、お前の信念を否定する訳では無い。だが、儂はお前には幸せに生きて過ごして欲しいと思っている」
勿論錆兎も。義勇もだ。
「ただ儂にはこうして剣を教える事しか出来ない。普通の幸せを教えてやれない。お前達を戦線に出すことしか出来ない老いぼれだ」
「そんなこと」
「ある。あるんだ」
「……私の幸せは」
Aは後頭部に回されていた鱗滝の手をとり、濡れた頬にそうっと当てた。それから瞼をおもむろに下ろすのは愛おしむ仕草だった。
「私の幸せは、夜義勇におまじないを唱えて、朝錆兎とお握りをにぎり、昼父さんに剣を教わり、夕……夕。みんなで夕餉を頂くことです」
「────」
「だから、そんなこと言わないでください。私を、信じてください」
鱗滝は面の奥で唇を震わせた。シワだらけの顔をAの肩で隠す。面をつけていることも忘れて静かに息を吸い込んだ。
「最終選別、必ず生きて戻れ──」
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ミルクリ - 初めまして。とても面白かったです。続きが読みたいのですが�兇離僖好錙璽匹魘気┐討い燭世韻泙擦鵑�？これからも応援しております。 (2021年9月21日 12時) (
レス) id: 9baecbdda2 (このIDを非表示/違反報告)
コア - 面白かったです �兇離僖好錙璽俵気┐督困韻襪藩�難いです (2021年6月29日 20時) (レス) id: cdf587c2d2 (このIDを非表示/違反報告)
莉亜(プロフ) - すごく面白くて一気に読んでしまいました！！！続きのパスワードって教えてもらえますかね？これからも頑張ってください (2021年5月14日 22時) (レス) id: 6a10e782a2 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - おもしろくてとまらなくなりました！守護聖人IIのパスワード教えていただきたいです！ (2020年12月15日 20時) (レス) id: 833cf0aedc (このIDを非表示/違反報告)
糸針シナ(プロフ) - 楓さん» 楓さん、コメントありがとうございます！ひえ〜嬉し過ぎます…！そんな風に言っていただけて後衛の極みです〜！長編が好きなものでこの守護聖人も他作品もすごく長いですが楽しんで頂けたらと思います！短編もあるので宜しければ覗いて行って下さい〜 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 2d5e82106c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：糸針
| 作成日時：2019年10月25日 13時
