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- 004 苦しみには価値がある ページ4

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現状行く宛てが無いというのが辛かった。

帰る家など無い。血痕と臓物に塗れた悲劇の現場に戻ろうとそこにはもう何も無いのだから。思い出はあろうが一度愛しい人の血が染み付いた家にもう一度踏み入り、そこで衣食住をとは到底思えなかった。

Aは幼い義勇を背負い野宿できる場所を探し回った。大抵見つからなくて食事処に近い路地裏等に座り込むのだが。

残飯でも有難かった。口に入る物であればなんでもいいと思えた。ただ義勇には比較的衛生的なものを血眼になって探して与えた。

その度Aは「親切な通りすがりのお婆さんが食べなさいと。だから気にしなくていい義勇。いっぱい食べろ」と未だに取れない包帯を触って笑っていた。


「A……Aはお腹空かない?」

「ああ。満腹なんだ」


半欠片程度のお握りを食べ終えた義勇が力のない声で問いてきた。余計な心配などかけたくないAはまた笑って大丈夫だとお腹をさする。それは満腹でもう食べられない〜! と言っているように見えた。

義勇はくぅと眉を下げた。その顔はとても寂しそうで悲しそうだった。

Aは慌てて、と言っても表情等殆ど変わらないのだが、義勇の頭を撫でる。


「どうした。お腹が痛くなったのか?」

「……違う」

「じゃあ体調が」

「違うよ、」


義勇は倒れるようにAの肩にもたれかかりやがて胸に滑りお腹にすっぽりとおさまった。

消え入るような声とともに己の膝の上に崩れ落ちてしまった義勇を、Aはどうしていいか分からず両手を宙で泳がせていた。当惑仕切った右目が黒いつむじをよろよろと見つめている。


「Aも食べて。そうしないと死んじゃう」


義勇は死なないでと訴えていた。今にも溶けて消えてしまいそうな細い腕をAの腰に巻き付けて顔を沈める。以前より密着するようになったのはきっと心細くて仕方がないからなんだろう。

唯一の抱き着く温もりすら失くすのは嫌なんだと泣き叫んでいるように見えて思わず、閉口した。

やがて小鳥のさえずりのような寝息が耳に触れる。規則正しくも拙いそれにゆっくり俯いて、己の不甲斐なさを悔いた。


「………………蔦子さん」


祝言(しゅうげん)を挙げる貴女の姿が見たかった。優しい優しい拍手喝采に包まれる幸せな貴女達が見たかった。

要登Aは嘆く。心の中で。たった一人で。

全ては己の弱さ故だと。

あわよくば、───妹の晴れ姿だって見たかった。

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糸針シナ(プロフ) - 何卒さん» ういった形を取らせて頂きました!ほんとに申し訳ないです、更新は今まで以上に頑張りたいと思っています…! (11月23日 14時) (レス) id: 2d5e82106c (このIDを非表示/違反報告)
糸針シナ(プロフ) - 何卒さん» 何卒さんすみません!いえいえ変身させていただきます!本当にご迷惑おかけしましたー!頂いていたコメント、返信したのですが何卒さん見られる前に作り直してしまい…本当に申し訳ないです汗 フラグについて運営に報告していたのですが全く対応して貰えなかったのでこ (11月23日 14時) (レス) id: 2d5e82106c (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - ↓すみません!作り直りたのに気づかなくて…!スルーしていいです! (11月23日 14時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - シナさん!!続編、削除されたんですか??それとも運営にですか…?? (11月23日 14時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
糸針シナ(プロフ) - Mariroさん» こんにちは!Mariroさん、コメントありがとうございます。作ってました。一気読みお疲れ様です〜!鋼鐵塚さんともすぐ打ち解けるだろうな要登さん。という気持ちで書いていました。鱗滝さんはもう第二のお父さんなので…喜んで頂けて何よりです。今後も頑張ります。 (11月14日 12時) (レス) id: 2d5e82106c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:糸針 | 作成日時:2019年10月25日 13時

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