�� - 005 善行をしてもすぐに忘れよ ページ19
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「この刀を抜け」
「……何故でしょう」
Aは眉を下げた。
紫色の瞳に映るは岩肌に突き刺さった刀だった。
───鱗滝左近次による鍛錬が始まってから数日。狭霧山下山より暫くの時間が経過し、Aは義勇とともに錆兎に並びつつあった。
その並びからAが育ちの良い筍のように才覚を現すのは早かった。年齢差に身長差、手脚の長さもあったがそれにしても逸材だと鱗滝は感じた。
産まれた時より刀を握り日々刀に触れ刀と離れることなく生きてきたようだった。Aはそれ程に刀をものとしていた。
初日は勿論慣れるために木刀から渡した。真剣を握らせたのは木刀をさばくAを見て、二日後のことだ。細い腕では重すぎるかという心配、諸々あったものの、Aはそれらを全て裏切り刀をまるで自分の体の一部のように振るったのだ。
「お前は刀を己より愛している」
「え……？ は、い」
Aは首を傾げつつも頷いた。
鱗滝の見解は正しい。本人こそ無意識で無自覚だが、言葉の通りAは刀を愛している。無機物、武器というより人間のように見ているのだ。柄を握るその手が刃紋を見つめるその目が語っていた。だからこそ刀からも愛され、刀が到底斬れるとは思えぬ物を斬りえる。
錆兎、義勇には大きな岩を両断するように。Aにこの刀を抜くように言ったのはこれが故であった。
「A。お前はこの刀すら愛するだろう。そしてこの刀からも愛される」
「愛される……」
「この刀は呪われている」
思わずえっと声が漏れた。
まじまじと刀身を見つめる。
「所謂妖刀というやつでな。儂がここに来るより前からこの状態のまま動かされたことは無い。これまで何人もの人間が挑んだが、誰にも抜けなかった」
岩に突き刺さっているとはいえ決して深々とでは無い。刀身は割と目に見えるし苔や草木が絡まってはいるものの錆びている様子はない。
それがまた不可解でAは戸惑った。
「それを私が抜けるのですか？」
聞くべきではないかと迷ったが聞いてみた。
「抜ける。お前なら」
ふわり。と頭に手が置かれた。確信の響きと信頼の温度。自信と勇気を抱かせてくれる優しい声音が体中に染み渡った。
頬が緩む。桃色に彩られた子供らしい顔立ちで頷き「はい。励みます」と。囁くような声で紡がれた最後の言葉に、鱗滝は思わず指の関節を捻った。
「…………父さん」
Aは心底嬉しそうに、そうして鱗滝を呼んだのだった。
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ミルクリ - 初めまして。とても面白かったです。続きが読みたいのですが�兇離僖好錙璽匹魘気┐討い燭世韻泙擦鵑�？これからも応援しております。 (2021年9月21日 12時) (
レス) id: 9baecbdda2 (このIDを非表示/違反報告)
コア - 面白かったです �兇離僖好錙璽俵気┐督困韻襪藩�難いです (2021年6月29日 20時) (レス) id: cdf587c2d2 (このIDを非表示/違反報告)
莉亜(プロフ) - すごく面白くて一気に読んでしまいました！！！続きのパスワードって教えてもらえますかね？これからも頑張ってください (2021年5月14日 22時) (レス) id: 6a10e782a2 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - おもしろくてとまらなくなりました！守護聖人IIのパスワード教えていただきたいです！ (2020年12月15日 20時) (レス) id: 833cf0aedc (このIDを非表示/違反報告)
糸針シナ(プロフ) - 楓さん» 楓さん、コメントありがとうございます！ひえ〜嬉し過ぎます…！そんな風に言っていただけて後衛の極みです〜！長編が好きなものでこの守護聖人も他作品もすごく長いですが楽しんで頂けたらと思います！短編もあるので宜しければ覗いて行って下さい〜 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 2d5e82106c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：糸針
| 作成日時：2019年10月25日 13時
