◇ ページ49
「夫婦の初の共同作業にしない？」
提案したのに、
『したいけど、あちこち痛くて…ウンッ、声出しすぎて喉も痛くて…』
完膚なきまでに切り替えされた。
俺は自分の所業がわかってたから、車に戻ったタイミングで助手席のAに向き直って、
「わかりました。じゃあ、キスしてください」
って言った。
『は？』
鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔したAが、俺をきょとんと見返したから、そのいくつになってもあどけない顔にふっと笑いかける。
「キスしてくれたら、がんばります」
頬に手を当てて、指でそっと撫でて、額を寄せる。
「さっきのおしゃれしてくれた顔、目に焼き付いてるよ。
ほんとかわいくて、素敵だった。あの状況じゃなきゃほんとにうっとり見倒してたと思う。
でも、俺、今みたいなAで全然いいみたい」
その無造作な顔も、スタイルも、
全部ぜんぶ愛しくて、
そこにあるだけでいい。
なくならないで。
ずっとずっと、そばにあって。
じゃないと俺、たぶんもう生きていけない。
俺の心臓は、Aで動いてるんだって。
「お願い、奥さん。キスして」
Aがキスしてくれること、めったにないから色んな思いを込めて懇願したら、Aは頬を真っ赤にして、口元むにゃむにゃ何か言いたそうに動かした後、
『ねえ、奥さんの反対って、何なの？旦那さん？あなた？』
「今それ悩むとこ？さっさとしてよ。空気読めないの？」
ブチ切れた俺が、我慢できずにめちゃくちゃキスした。
結局これが、最後のプロポーズだったわけだけど。
後で何回思い返しても、なんか俺たちらしいなって話になって。
今では笑い話だよ。
後はもう、死が二人を引き離しても？
きっと来世も一緒にいるよ。
おわり
↓↓↓本編↓↓↓
地上の楽園 -いち- 【JK】
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作者名：フネ55
| 作成日時：2023年1月28日 22時
