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私は乱歩さんと敦さんが此方に意識を向けていないことを確認し、太宰さんに近寄って小さく話しかけた。

「あの、太宰さん」
「なに?」

雰囲気から察したのか、太宰さんも少し声を潜めて答えてくれる。それに感謝しながら、私は行きの電車で乱歩さんが私に云ったことをそのまま伝えた。それを聞いた太宰さんは、「あー」と苦笑する。

「矢っ張り、これは……」
「うん。バレたね」

きっぱり断言されて「ですよね」と溜息を吐いた私を見て、太宰さんは楽しそうに笑う。

「でもまあ、心配いらないと思うよ。乱歩さんは多分私のことも気づいているだろうけれど、何も云っていないし。彼にとってはさしたる問題ではないのだろう。別に不安に思わなくていいさ」
「…そうですか」

太宰さんがそう云うならそうなのだろう。それに実際問題、バレたからといって私に出来ることなど何も無いし、彼に対して何かをする気もないのだから、ここは割り切るしかないのだが。

「…少し、意外でした」

正面に向かって落ち始めた夕日を見ながらぽつりと零すと、太宰さんは「何が?」と首を傾げる。

「探偵社は、悪を許さない人ばかりだと思ってたので」

悪は凡て排斥する処なのだと思っていた。かなり自由で開放的な雰囲気ではあっても、悪だけは決して許さないものなのだと――そう、思っていた。
そんな私に、太宰さんはくすりと笑った。

「根っからの悪なら、乱歩さんだって見逃さないさ。それに私達は確かに正義の側だが、悪と最も関わる立ち位置でもある。悪への理解は多かれ少なかれ、あるものだよ」
「だとしても、相当変わってます」

何しろ処刑人なのにまるで気にも留めないなんて、悪への理解があっても普通は出来ない筈だ。太宰さんの事も、見抜いていて放っておくなど。

そしてそれは乱歩さんだけでなく、他の人もそうだ。災害指定猛獣で、かつ黒社会に狙われている敦さんを、皆あっさりと受け入れているのだから。今日の襲撃だって誰も彼を責めようとしなかったし、いっそ変わりすぎとも云えるのではないだろうか。

「でも、嫌じゃないだろう?」
「それは……まぁ、はい」

嫌いだとはまるで思えない。そもそもの話、マフィアで私の周りに居た人達も皆、変人ばかりだった。今更嫌悪など感じるはずもない。

(――寧ろ)

その自由さに、変わりように、居心地がいいと感じている自分が、確かにそこに居た。

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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時

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