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11-4 ページ18

取り調べが終わった後、署を出た私達を見送りに出た箕浦さんは、

「……世話になったな」

と云ってから、ばつが悪そうに頭を掻いた。

「それに……何だ。実力疑って悪かった。難事件があったら、また頼む」

実直なその謝罪に、私は少し驚いた。あれだけ煽り煽られの云い合いを繰り広げた上で、自分の非を認めて謝罪するなど、多分なかなか人には出来ないことだ。
それを乱歩さんは感じ取ったのか、或いは疑われたことなど端から気にしていなかったのか。何の邪気もなく、にっこりと笑みを返す。

「僕の能力が必要になったら、いつでもご用命を。次からは割引価格でいいよ」

くるりと踵を返し、鼻唄でも歌い出しそうな様子で歩き出した彼の後に私達は続く。その背をじっと眺めながら、私は未だ信じられない思いで、先程太宰さんに告げられた事を思い返した。

(乱歩さんが、能力者じゃない……)

そう。太宰さん曰く、乱歩さんの『超推理』とは異能力ではないらしい。しかも本人もそれを自覚していないという。
そんな真逆と敦さんと揃って驚愕したが、その根拠をつらつらと述べられれば(それで私が杉本さんの台詞に違和感を覚えた理由が判った)、信じざるを得ず。

つまり、乱歩さんはとてつもなく頭が良い上に、とてつもなく頭の回転が速く、更には太宰さん以上の洞察力を持った人なのだ。……最早意味不明だが、とにかくそういう事なのである。

(得体が知れないどころじゃないと云うか。いっそ最新型AIを組み込まれたロボットだって云われた方が納得できると云うか)

何にせよ、とんでもない推理力だ。今こうして歩いている中でも、彼は一体どれ程の事柄を見抜いているのだろう。
ただ道行く人の事さえ、会話から、そしてそれ以外の些細なことから、深い深いところまで見抜けてしまうその目に見える世界は、果たしてどんなものなのか。

(少なくとも、見てみたい気はしない)

知らなくていいこと、知りたくなかったこと。そんなことまで凡て見える世界は、私には多分耐えられない。
だからあんな風に笑っていられる乱歩さんが、能力を含めてとても凄い人なのだと、今は心から思える。

(でも、そうなると私の事も見抜いてるってことになるんだけれど)

電車の中での出来事を思い返し、私はまた不安に駆られて太宰さんを見やる。もうバレているのはほぼほぼ判っているが、一応相談はしておきたい。彼が私を「処刑人」だと見抜いた今、どうする心算なのか。

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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時

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