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「それでお前は議員の飼い犬として、山際を殺したのか!?」
「ちっ、違います！」
信じられないものを見るかのように目を見開きながら問いただす箕浦さんに対して、杉本さんは青ざめた。
「私は彼女に警告を……。このままでは消されるから、証拠を手放せと！しかし、彼女は」
彼女は従おうとはしなかったと云う。苦肉の策として、彼は自分に銃を向けて彼女を脅したそうだ。それを止めようとした彼女と揉み合いになり、その拍子に、彼は銃で彼女を撃ち殺してしまった。それに混乱した杉本さんは助けを求めて議員に連絡し、云われたままに犯人がマフィアの人間であるかのように偽装した後、遺体を川に流した。
「山際が入手したという証拠品は何処だ」
箕浦さんの怒りを内包した低い声が、落ちた沈黙を破る。しかし、杉本さんは答えない。
「その議員は山際の仇だ。云え杉本！」
業を煮やした箕浦さんの怒鳴り声と、机を叩く凄まじい音が取調室の外にまで響き渡る。そこに、「ねえ、杉本くん」と、乱歩さんは杉本さんの肩に手を置きながら静かに声を掛けた。
「彼女の最期の台詞を中ててみせようか」
――『ごめんなさい』
杉本さんは直ぐには答えなかった。やがてその背が丸くなり、机の上で握りしめた両手に額が触れそうなほど頭が下がる。まるで、懺悔するように。
「……本当に……凡てお見通しなのですね……」
涙を零しながら、彼は小さな声で証拠品の場所を口にした。
「………」
聞こえてくる嗚咽に、私は少し視線を落とす。
普通の世界で生まれて、きっと普通に生きてきた彼は、ずっと望んでいた事に手を伸ばして道を違えた。始めは正しい生き方をしていても、こんなにも簡単に人は道を踏み外してしまう。
もしかすると、表だろうと裏だろうと、世界とは関係なく人はうまく生きられないのかも知れない。何が正しいのかも、選択した後で気付かされて。そして間違っていると判っていても、それを選ばずにはいられない時だってあるのだろう。
(生きるって、どうしてこんなに難しいんだろう。……正しく生きるのなら、尚更)
多分、正しいことの方が間違いよりもずっと少ないのだ。だから人は間違える。そこから正しい道へ戻れるならいいが、結局そのまま落ちて、抜け出せなくなって、ただ沈むことしか出来なくなる人もいる。
(矢っ張り、この世界は残酷だ)
そして一度底まで沈んだ私は正しい道に居てもきっと、底の見えない崖の縁に立っているのだ。
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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます！大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀｀)ノ頑張って更新しますね！ (2020年3月12日 7時) (
レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね！ (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね！すみません、修正します！ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜夜華
| 作成日時：2019年11月28日 1時
