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「放せ!僕は関係ない!」
敦さんの下で藻掻きながら杉本さんは必死に叫ぶが、確かな殺意を持って銃を向けておきながら訴えたところで、信憑性などまるでない。そんな彼の前に、乱歩さんは「逃げても無駄だよ」としゃがみこんだ。
「犯行時刻は昨日の早朝。場所は此処から140
「なっ、何故それを……!」
つらつらと述べられたそれにサッと青ざめた杉本さんを見下ろしながら、乱歩さんは静かに立ち上がる。
「そこに行けばある筈だ。君と被害者の足跡が。――消しきれなかった血痕も」
愕然とした表情で乱歩さんを見上げていた杉本さんは呆然と俯き、消え入りそうな声で呟いた。
「どうして……。バレるはずないのに……」
決定打とも云える台詞に箕浦さんはくしゃりと顔を歪め、やり切れない表情で彼の肩に静かに手を置く。
「続きは職場で聞こう。お前にとっては……元職場になるかも知れんが」
ジャラ、と。取り出された手錠の鎖が鳴らした音に身体の芯がスッと冷え、首や手足に圧迫感と冷たさを覚えた気がした。カシャンと手錠がかけられる高くて無機質な音が耳に付き、少し息が苦しくなる。だが、思わず手を遣った首元には当然何もありはしない。
けれど。殆ど消えて傍目には判らなくなった、しかし確かに残る擦れた痕を、指先は撫でていた。
***
何故杉本さんは、山際さんを殺したのか。
夕暮れの陽が差し込み橙色に染まった取調室の中で、彼はぽつぽつと話し始めた。
「撃つ心算は……なかったんです」
低く暗い声が隣の部屋から窓越しに見守る私達の耳に、少し籠もって届く。対して取調室の中に居る箕浦さんと乱歩さんは、彼の供述に静かに耳を傾けていた。
話によれば、山際さんは政治家の汚職事件を追っており、ある大物議員の犯罪を示す証拠品を入手した。しかしそれを知った議員が彼女をそのまま放っておく筈がなく、彼は警察内の
「そのスパイが……君というわけだね」
乱歩さんの確認に、杉本さんはより深く俯いた。
「昔から……警察官に憧れていました。試験に三度落ちて落ち込んでいる時、男に声をかけられたのです。警察官になりたいか、と……」
その男が件の議員だった。議員の力で警察官になり、見返りに指示に従っていた、と杉本さんは絞り出すように言葉を吐き出した。
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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時