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彼の柔らかい笑顔に箕浦さんは気を削がれたのか、少しばかり尖った空気が和らぐ。こういう所を見ると、本当に世渡り上手な人だと実感せざるを得ない。某御仁は、「あの青鯖は社会不適合者で女の敵で云々」と罵倒しまくってはいたが。
そして当の乱歩さんは鈍感なのか空気を読む気が無いのか、ニッと歯を見せて笑って、

「僕の座右の銘は、『僕がよければすべてよし』だからな!」

と、悪びれずに堂々と言い放った。どうやら本人は判ってアレをやっているらしい。心臓に毛が生えているどころではない。

「納得ですね……」(座右の銘『生きているならいいじゃない』)
「うん……いっそ清々しいかも」(座右の銘『困っている人は助けるべし』)

敦さんと揃って遠い目になって頷き合う。ここまで利己主義(エゴイズム)を貫かれてしまうと、何だかもう拍手を贈りたくなってしまう。当然、質が悪いのは云うまでもないが……どうでも良くなってきた。

(まぁ、太宰さんも同じくらい一貫してるんだけど)

質の悪い御仁その2(座右の銘『清く明るく元気な自 殺』)を見遣り、更に目が遠くなる。彼に至っては質の悪さの方向がアレなので拍手を送る気には到底なれない。

閑話休題。

太宰さんが上手く仲裁したとはいえ、散々莫迦にされた箕浦さんの機嫌が直るわけもなく、ついに彼は煽りに乗る形でこう云った。

「そこまで云うなら見せて貰おうか。その能力とやらを!」
「おや、それは依頼かな?」
「失敗して大恥をかく依頼だ!」

乱歩さんは待ってましたと云わんばかりに、にんまりと笑みを浮かべる。

「あっはっは。最初から素直にそう頼めばいいのに」

高らかに笑いながら、何故か懐から黒縁の眼鏡を取り出す彼を箕浦さんは鼻で笑った。

「ふん。何の手がかりもないこの難事件を相手に大した自信じゃないか。60秒計ってやろうか?」

挑発する台詞にも自信に満ちた声音で「そんなにいらない」と云い、不敵に口角を持ち上げる乱歩さんをハラハラしながら見守っていると、太宰さんが私と敦さんに囁いた。

「二人共、よく見てい給え。探偵社を支える能力だ」

薄く笑みを浮かべる太宰さんから乱歩さんの実力の高さが伺え、少し目を見張って彼の後ろ姿へ目を戻す。太宰さんにこう云わせる程なら、『超推理』という力は本当に実在するのかも知れない。

(でもそれは、私の前職に乱歩さんが気づいている事を肯定するのと一緒だ)

半ば判っていて、それでも信じたくない事実に指の先が冷えた。

11.名探偵の能力→←10-5



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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時

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