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密かに焦る私を余所に、太宰さんは静かな目で遺体を見下ろしている。
「この手口、マフィアに似てるがマフィアじゃない。つまり――」
「犯人の……偽装工作!」
言葉を継いだ箕浦さんの結論に、杉本さんは表情を暗くした。
「そんな……。偽装の為だけに遺骸に二発も撃つなんて……。非道い」
(……あれ)
その呟きが何故か引っかかり、私は杉本さんの顔を見つめた。おかしな事を聞いたような、辻褄の合わない何かがあるような。その違和感の正体を考えようとした矢先、
「ぶーーーーっ!」
と乱歩さんが突然大声を出した所為で、組み立てようとした思考は崩れた積み木のようにバラバラになり、そのまま霧散してしまった。
「はい時間切れー。駄目だねぇ君、名探偵の才能ないよ!」
けらけらと笑いながら杉本さんの頭をバシバシ叩く乱歩さんはどう見ても失礼極まりないのだが、慣れてしまったのか、今はその行為を余り不快に思うことはなかった。適応が早すぎて我ながら恐ろしい。
だが初対面の箕浦さんはそうはならず、「あのなぁ貴様!」と遂に乱歩さんを怒鳴りつけた。
「先刻から聞いていれば、やれ推理だやれ名探偵だなどと、通俗創作の読み過ぎだ!事件の解明は即ち、地道な調査、聞き込み、現場検証だろうが!」
彼が刑事として仕事に誇りを持っていることが容易に察せるその言葉に、最早流石というべきなのか、乱歩さんは「はぁ?」と心底呆れたような声を出した。彼の辞書には遠慮とか自重という言葉はないのだろうか。
「まだ判ってないの?僕の能力『超推理』は一度経始すれば、犯人が誰で何時どうやって殺したかまで瞬時に判るんだよ」
更に証拠の場所も犯人を自白させる方法も判る、と笑う彼に箕浦さんは益々
「巫山戯けるな、貴様は神か何かか!そんな力が有るなら、俺達刑事は皆免職じゃないか!」
「まさにその通り。漸く理解が追いついたじゃないか」
けろりとしたトンデモ発言に思わず耳を疑った。燃え盛る火にドバドバ油を注ぎ込む笑顔の乱歩さんの幻覚が見えて、気のせいでなく頭痛がする。
(駄目だ、大火災になる未来しか見えない)
現に箕浦さんは青筋を浮かべ、今にも飛びかかりそうな闘犬のように乱歩さんを睨みつけている。というか、本当に飛びかかるかも知れない。
ヒヤリとした空気が場に流れたその時、
「まあまあ刑事さん、落ち着いて。乱歩さんは始終こんな感じですから」
と太宰さんが明るい声で間に入った。
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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時