9.物騒すぎる探偵社 ページ2
「小僧に70億の懸賞金がかかっている、だと!?」
谷崎兄妹と敦さんを無事探偵社の医務室へ運び終えて、一息吐いた後。事情の説明を求めた国木田さんに、例の屯所が爆破された事と合わせて先刻の事を話すと、彼は鋭い目を大きく見開き驚愕した。
当然である。つい昨日まで一般人だった少年に70億もの懸賞金が懸かっているなど、まるで冗談みたいな話だ。――しかし。
「芥川がそう云ってましたから、間違いありません」
何と云っても情報源はあの芥川なのだ。実際に敦さんを襲ったことも合わせて考えれば、嘘だとは到底思えない。国木田さんも同じ考えなのか、一際険しい表情になる。
「面倒なことになったな……。奴が来ると云ったからには、必ず探偵社に来るだろう。全く、また俺の予定が狂う」
忌々しげに呟きながら深い
「太宰は何処へ行った?」
「さぁ。居なくなりました」
三人を医務室へと運び終えるなり、「じゃ、後の報告はよろしく〜」と、止める間もなく彼は何処ぞへ去ってしまったのだ。いっそ鮮やかなまでの押しつけっぷりに怒りより呆れが先に出てしまった私は、認めたくないが結構毒されているらしい。……認めたくないが。
「どうせ川にでも行ったのだろうな。こんな時にあいつは全く……!」
国木田さんのこめかみには見事な青筋がビキビキと浮かび、今にも切れてしまいそうで少しハラハラする。こんなに太宰さんのやらかす事で腹を立てては、いつか倒れてしまいそうだ。主に脳梗塞か、ストレスによる胃潰瘍で。
(あの人の放浪癖はもう諦めるしかないと思うんだけど、見過ごせない程真面目なんだろうな……。太宰さんは何だかそれで遊んでるようにも見えるけれど)
何て不憫な、と哀れみながら「どうしますか」と尋ねれば、国木田さんは険しい目付きのまま私を見下ろした。
「襲撃に備え、書類を倉庫に運ぶ。お前も手伝え」
「判りました。事務員の皆さんへの避難指示はどうしますか?」
いくら武装探偵社とはいえど、事務員まで戦闘ができる訳ではないだろう。襲撃された時、ただでは済まない筈だ――と、思ったのだが。
「必要無い。襲撃などいつものことだ」
「え」
予想の斜め上を行く返答に思わず固まった私を尻目に、国木田さんは運ぶ書類の指示を出して一旦敦さんの様子を見に行ってしまう。
……そしてその数分後、谷崎さんの絶叫が大きく響き渡ったのだった。
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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時