人生万事塞翁が馬【はじめしゃちょーの畑】 (ページ28)

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なんとも恥ずかしいページ28

「いて。」

と短く声を上げたそれは、どうやら男の人のようだった。

「あー、すいません。大丈夫でしたか……って、あ。」

「あ。」

だいちさん、だ。

ぶつかった相手がだいちさんだと分かり、一気に安心したのと同時に体の力が抜けていく。

「え、え、ちょっと待ってなんで泣きそうなの！？」

「あ、あの、助け…助けてっ、くださ…」

恐怖のせいで、情けない姿を見せてしまっている。
知ったことか！助かればもうなんでもいい

「えっと……あー。そういうことですか。来て。」

察してくれたのか、だいちさんは私の手を引き角を曲がる。

少し歩いたところで振り返り

「ちょっとだけ我慢してね」

そんな言葉を聞いたかと思うと、急にだいちさんの方へと体が引っ張られた。

「え、あの」

「静かに。」

すっぽりだいちさんの腕の中に収まった私は、急なことに何も出来ずにいた。
いや、何もしなくていいんだろうけど…

動揺している私をよそに、だいちさんは大きな声を発する

「ったくさー、大丈夫だった？俺心配したんだかんね？だから1人で歩くのはやめろって言ったんだよー」

「全く…確かにさー、大切な彼女1人で帰らせたのも悪いと思ったけど、お前俺の事呼んでくんないだもん。言ってくれれば迎えに行ったのにさ」

「つーわけだから、帰ろ。ほら。」

え

えっ、

「ほら、行くよ。」
と、今度は小声で話してくる。

突然のこと過ぎて何も頭に入ってこない。

だいちさんは、ただただ腕を引っ張られついて行く私を振り返り睨む。

いや、その視線は私ではなく、私の後ろを捉えていた。

ーー

「ここまで来れば大丈夫かな〜。あ、いきなり変なことしてごめんなさい」

「あ、いえ、助かりました。ほんと」

「最初よくわかんなかったんですけど、アレでしょ？ストーカー。」

「そう、だと思います。相手のことよく見れなかったんで、私もよくわからないですけど…」

「まあ、もう大丈夫だと思いますよ！一応、さっきも尻尾巻いて逃げてってたし」

「ああ…さっきのあの台詞って、それが目的で…」

「あーー、思い出させないで！！恥ずかしい！！」

自分で起こしてくれた行動にも関わらず、だいちさんの顔は真っ赤だ。

暗闇でも分かるくらい火照った顔に、私も少し恥ずかしくなってきてしまった。