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その35 ページ35

向かい合って座り、私はココアをすする。
ちょっとはしたないけど、熱々なのでずず、と音を立てた。

私の喉がごくりと嚥下したのを見て、彼は口を開く。


「昨日は、すまなかった」
「...めちゃめちゃに抱いたこと?」
「ああ。我慢できなかった、もちろんそれも理由の一つだ。でも...一番は、もう逃がしたくないと、そう思ったから」
「...」

じっと零の瞳を見つめる。
それに耐えられなくなったように、零は自分の手元へ視線を落とした。

「...A、まだ俺を、好きでいてくれているのか?」
「えっ」
「一年前のあの日、俺はAを置いてシークレットの捕獲に向かった。その時にここは安全だと...ここにいてくれと、遠回しだが伝えたつもりだった」
「...うん、気付いてた」
「だというのに、君はいなかった。諸々の報告や準備を終えて、ゆっくり話でもしたいと、俺の気持ちも伝えたいと思ったのに。」
「...」
「すぐに探したかった、けどシークレットの捕獲作戦のために、それが叶わなかった...そして君は海外へ行ってしまっていた。」
「...」
「なぁ、教えてくれないか。
...俺は、Aのことが好きなんだ。愛してるんだ。...ずっと、そばにいて欲しいんだ...」

今にも泣き出しそうな表情と声に、ココアを置いて立ち上がる。
そっと彼の後ろに回り、座ったままの零を抱きしめた。それでも零は顔を上げない。

「一年もあれば、忘れられるって思ってたのに」
「...」
「無理だったの。もっともっと会いたくなるだけで。」

うう、こんなこと話すの恥ずかしい...!!
でもでも、零も話してくれたんだから、私もちゃんと話さないと。伝えないと。

「ねえ、零」
「...A」
「好きだよ、大好き」

零に、ぶつけるように想いを叫んだ一年前のあの日から。気持ちなんて、1ミリも変わっていないの。
言葉にするのはあまり得意じゃないんだけど、頑張って伝えてみる。

「...もう、すれ違いはじゅうぶんだよ...」

自分が思ったよりも、随分寂しげな声が出てしまった。その瞬間、零は勢いよくこちらを振り返り、立ち上がって、ガタン、と音を立てて零のマグカップが倒れる。
ほとんど飲んでいなかったらしいコーヒーが流れ出るので私は焦ってマグカップを立てようと腕を伸ばすが、目的を達成することなくその腕は掴まれた。

「零、コーヒーが、!」

降ってきたのは唇。
激しいのに優しいキスに翻弄され、その間に身体はしっかりと強く抱きしめられていた。

離さない、と言うように。

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れい(プロフ) - 復元してくださりありがとうございます!! 此れからの更新も待ってますね (2019年2月23日 21時) (レス) id: 541088bf06 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - れいさん» お早いコメントありがとうございます!!なんとかかんとか復元ができましたのでまた続編のほうで続きを書きます…!ありがとうございます(;ω;) (2019年2月23日 17時) (レス) id: 865c783a94 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - キャバ嬢 書きましょう!! (2019年2月23日 17時) (レス) id: 541088bf06 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 陽香さん» ひええありがとうございます…!もっと更新できるように頑張ります!! (2019年2月20日 22時) (レス) id: 865c783a94 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - ののいろ系女子さん» 最近降谷さんが出てきてませんがそろそろ出てきますので…!よろしくお願いします! (2019年2月20日 22時) (レス) id: 865c783a94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エリス | 作成日時:2018年6月8日 9時

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