331)気持ちのいい日（You side) ページ31
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武が乗った飛行機を展望デッキで見送った。
気持ちはとてもスッキリとしていた。
ずっと言えないでいたことを言えたからなのか、武の笑顔を見たからなのか。
いつもならソウルまで真っ直ぐに電車で帰るところだけれど、お天気も気分も良くて、バスに乗ってみようと思い立った。
ソウルに来て何年も経つのに、行ったことが無いところは沢山ある。
仕事にも時間にも縛られないで、こんなにゆっくりできるのも始めてかもしれない。
よく分からないままに、なんとなくソウル方面に行くバスに乗ってみた。
バスの中は最初はスーツケースを持った人が沢山いたけれど
ひとり降り、ふたり降り、
気がつけば数人が乗っているだけ。
段々と都心から少しずつ離れていってるのはわかっていたけど、景色は綺麗だし空気はおいしいし
時間はあるからゆっくり帰ればいいやなんて。
バスが緑の中の上り坂を登る。
なんとなく見たことがある風景な気がして気になった私は、降車のボタンを慌てて押した。
私を降ろしたバスはあっという間に見えなくなり、残された私は拓けたほうに歩いて行った。
平日の昼間でちらほらとしか人が居ないけれど、ちょっとした公園になってるみたい。
駐車場まで来ると、見たことがある風景の理由に気がついた。
A「ここ…」
あの時は夜だったから直ぐにはわからなかったけど、ここはユノと再会した時に車で連れてきてもらった丘だ。
ここから見る夜景がとても綺麗だった。
なんだか急にユノに会いたくなった。
でもユノは仕事中だし。
ここからの景色をスマホで撮影してユノに送った。
《ここ、何処だと思う？》
なかなか既読にはならなかった。
仕事中だもん、仕方がない。
そのまま少し歩くと、芝生をはったきれいな広場に出た。
休日はきっと、家族で賑わうだろう広場だけど、さすがに今日は誰もいない。
ふと見ると、少し高い所が展望台になっている。
そこで、イーゼルを置いて絵を描いている男の人を見つけた。
この景色をどんな風に描いているんだろう？
あれだけ絵を描くことも見ることも避けていたのに、そんな自分の変化に笑ってしまう。
クスッと笑った私の気配に気がついたのか、その人が振り返った。
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作者名：mari
| 作成日時：2019年5月16日 0時
