021）3年前の辞令1<You side> ページ21
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「おい、A。」
A「…」
「おい！高城A！聞いてんのか？」
A「あ？すいません！榊さん！」
「ぼーっとすんな。」
彼が置いていったあの小さな紙袋をの中身を見る勇気も無く
シャワーを浴びてそのまま出勤した。
合鍵を持ってる筈なのに。
彼が部屋に入った様子も無かった。
榊「午後からの打ち合わせの資料は出来てるのか？」
A「はい。出来てます。」
榊「お前、顔色が悪いぞ。大丈夫か？」
A「…大丈夫です。」
日本の大手広告代理店に勤める私は3年前に榊さんと共に韓国支社に異動となった。
その頃日本ではK-POPの躍進は社会現象となっていて、韓国と日本で活動するアーティスト達の広告活動も２つの国で同時にプロモーションをかけることも珍しくはなかった。
当時まだ入社3年目だった私が榊さんに付いて勉強している時に、初めて会った韓国人のアーティストが彼だった。
元々はグループで日本活動していた彼がソロとして日本に本格的に進出するにあたり、うちの会社が全面的にプロモーションを引き受ける事となり、その担当窓口が榊さんだった。
榊さんは私よりも8歳年上で、英語も韓国語も堪能。仕事にはとても厳しい人だけど、誰よりも頼りがいのある先輩。
社運をかける程の大きなプロジェクトを任されるのも納得出来る。
少しでも多くの事を榊さんから学ぼうと寝食も忘れて頑張ってたっけ。
榊さんが韓国への異動の辞令が降りると噂になったときに、他に誰を連れていくのか社内は大騒ぎになった。
そりゃそうだ。社運をかけたプロジェクトだし。これを成功させたら出世は間違い無し。
優秀な先輩たちは皆、こぞって立候補していたけど。
《辞令 韓国支社 高城A》
ある日、辞令が貼り出され
私の韓国行きが決まった。
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作者名：mari
| 作成日時：2017年12月26日 0時
