『バグスターエモーション』

5.ハウリングの疑問 ページ5

4人のドクターが適合者となって仮面ライダーになり、黎斗も名目上は衛生省と協力している。
ここまでは黎斗の計画通りだ。

その黎斗を利用してクロニクルを完成させ、正宗をクロノスにするのがAの本当の目的。


うまく黎斗を乗せ、全てが順調に見えたが、関与する者が増えれば予想外のマイナートラブルも増えて来る。


一つ目はグラファイト。
バグスターである自覚が人一倍強い彼は人間である黎斗に初めから反抗意識があるようで勝手な行動に頭を悩ませる。パラドと共に要注意だ。


二つ目は九条貴利矢。
ゼロデイの秘密を嗅ぎ回っており、かなりの危険分子に見える。


そして3つ目。
これはクロニクルの計画とは無関係でAの個人的な問題なのだが、、、花家大我の事だ。

先日の社長室で一件から、Aの中の宿主の記憶のフラッシュバックが増え、特に一人になると大我に抱き抱えられた時の暖かい感触と共に蘇り混乱してしまう。



花家大我の腕だから記憶がハウリングしたのだろうか。


それとも誰の腕で抱き抱えられても記憶はハウリングするのだろうか。



そんな疑問が何度も頭をよぎる様になっていた。


グラファイトにかき回され、貴利矢に黎斗が怪しまれているのをどうやってつじつまを合わせようかとAはデータを入力しながら考えていた。


一人で行うデータ入力は深夜に及び、良い考えも思い浮かばないAは、気分転換に社長室を出て突き当たりの廊下まで歩いた。


ガラス張りの廊下の突き当たりは、眼下に素晴らしい夜景が広がっていた。

その夜景にぼんやりと映る自分の姿。


やはり寂しそうな顔に見えた。


目的の為に手段を選ばず進んできた気持ちは、ここに来て満たされない何かを感じ始めていた。


花家大我の腕の感触はAの心と身体に暖かさを記録データとして残してしまった。

そしてCRで度々感じる鏡飛彩の恋人への思い。



バグスターの自分には無縁の感情だと思っていたし、欲しいとも思わなかった。


でも、、、やはり夜景に映る自分の顔はどこか寂しそうで、小さなため息と共に訳の分からない切なさが胸から漏れるのを感じてまた社長室へ戻った。




ドアを開けて社長室へ入ると黎斗がいた。



黎斗「やぁ。」


A「社長、こんな深夜にどうされたのですか？」



黎斗は自分のデスクに腰をかけて腕を組み、背面のガラス張りの窓から軽く微笑みながら外を眺めていた。



黎斗「君がいるかと思って来てみたんだ」

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