青春の１ページ【合作短編集】 (ページ4)

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橙色の春が君との始まり/高峯翠ページ4

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｢せ、んぱいは … 好きな人とか、いるんすか｣

｢いない、かな｣

そっすか、と放課後の1年A組の教室で彼は私にそう言った。
私は書類を蓮巳先輩に提出したのだが、書き忘れた部分があると返されて一番近い教室の机を借りて書類直しをしていた。

偶然にも忘れ物をした高峯くんと鉢合わせたのだ。

私の借りた誰かの机の斜め右に座って、私の顔を見ないでその質問をした高峯くんをちらりと盗み見ると夕陽に照らされて白いワイシャツが薄橙色に染まっている。

心臓がどき、と音を立ててきゅんと苦しくなる。私は高峯くんのことが好きだけど、言えない。

空いた窓から風が吹いて、それと同時に陸上部さんたちの元気な声が聞こえてくる。
私は好きな人と二人きりという現象にそわそわしながらボールペンを持つ手を動かす。
指先から足の先までピリピリと恋の痺れ。

今日折角早く終わったのに忘れ物して帰るの遅くなるなんて…鬱だ…死にたい…。と完全鬱モードに入った彼に早く帰らないの？と聞けば真っ赤な顔して私の方を向いた。

｢ …先輩のこと待ってるんですけど｣

＿＿＿＿弱くても男なんで、…先輩は女の子でしょ、遅い時間だから危ないじゃん。

そう付け加えて呟く高峯くんに私の頬はジリジリと熱を帯びていく。高峯くんが私のことを女の子と認識してくれているのが単純に嬉しかった。
ただのプロデューサー科の女の先輩と思われていると思ってたから。

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