魔法にかけられて/5 ページ48
彼を目にした瞬間、心臓が高鳴った。
相変わらず綺麗な顔をしているとか、こっちを見た、とか、そういうことなんて御構い無しに、ただ彼だと認識した瞬間にどきりとしたのだ。
入り口で止まった私の横をすり抜けて、渉さんが部屋に入った。「れ〜い♪」にこにこと零さんを呼びながら薔薇を撒き散らしているのを見るのはもう何十回目にもなるけれど、相変わらず毎回驚いてしまう。
と、渉さんはくるりと振り返り、私の両肩に手を添えた。いつの間にか、背後に周りこまれている。さっきまで前にいたのに……！？
「えっわっ、わたるさんっ！？」
「どうですか〜、零！サンドリヨンさんに魔法をかけてみました、ちちんぷいぷいっと……☆」
指先で私の三つ編みをつまんで、渉さんはばちんと音がつきそうなウィンクをした。すぐそばに光を放つ美貌があって、ドキドキするどころか私なんかの顔があって申し訳ないぐらいだ。
「……」
一方零さんは、無言だった。
無言で、私の顔をジッと見ている。かと思えば、棺桶の上から降りて、近づいてきた。待って、待って、渉さんだけでも精一杯なのに、零さんまでこられたら……！！
「ん〜……？」
1メートルほど先で足を止めた零さんに胸を撫で下ろしていたら、訝しげに目を細めていた彼は顔だけをさらに近くに持ってきて。眼前にアイドル様の顔があるのだ、これは顔を逸らしてしまうのも仕方ないだろう。コミュニケーション力以前の問題だ。
「なんで顔逸らすんだよ、こっち見ろよ」
少し苛立ちを含んだ語気で言われて、それから片手で顎を掴まれる。うにっ、とかわけのわからない悲鳴をあげてしまって、目の前の彼に鼻で笑われた。
「れっ、零ひゃんはらしてくらはいっ！」
「ほらほら零、ご感想を！100文字以内で！」
「なんだよその文字数制限……。え〜、どこが変わったって？分かんないんだけど」
「っ！？」
自分でも分かるぐらいに落ち込んだ顔をしていたのか、零さんは噴き出した。それから、ぽん、と私の頭に手をおく。
「嘘だよ、ウソ。おまえ、表情がコロコロ変わって面白れぇんだよな〜♪」
その言葉に、ほっとして。
ああ、もう、何気ない言葉や仕草にもドキドキするのは、これは＿＿……。
……そこまで考えて、私はゆるく首を振った。違う。ドキドキするのは、恋なんかじゃない。恋慕に似た、強い憧れだ。
そう思った。思い込もうとした。
でなければ、私はきっとこの人の側にいられないから、と。
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました！ (2017年10月29日 15時) (
レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか？ (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます！とてもとても嬉しいです…！私もれいさんにプロデュースされたい！という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…！もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません！笑 続き楽しみにまってます！更新頑張ってください！ (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜！ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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