目と目が合う/3 ページ22
「……あ〜、分かった」
ふと、朔間さんが手を打った。「ちょっと顔あげてみろよ」言われるがままに顔をあげたら、おもったより近い位置に彼の端正な顔立ちがあった。びっくりして、さっと目を逸らす。
「それだよ、それ」
「……ぇ?」
目を逸らしたままだから、彼の表情はわからない。けれどその声音から、不機嫌なことだけは汲み取れた。私は、また知らないうちになにか失礼なことをしてしまっただろうか。……わからない。ろくに他人とかかわったことがないから、何が失礼で、何が喜ばれるかなんて。
怒った顔が見たくなくて、じっと床を見つめていたら、突如顔を持ち上げられた。それこそ強い力で引っ張られて、かなりの衝撃な上に首がもげそうになって痛かったけれど、それも、目と鼻の先にある彼の顔で全て吹っ飛ぶ。
数センチの距離に、朔間さんの瞳があった。
「ちゃんと俺を見ろよ」
私の頰をがしりと抑えた彼は、息がかかりそうなほどの近距離で囁く。
顔が熱くなるのが分かった。けれど逃げられない、恥ずかしい、ごめんなさい……!!
涙目になる私に、さすがに気づいたのか、朔間さんは手を離す。「あ〜、言い方が悪かったか?」後ろ髪を払いながら、彼は私を見た。
「あのさぁ、おまえいっつも目ぇ逸らすよな。前までは、髪で隠れてて確信は出来なかったけど____話す相手の顔は、ちゃんと見なきゃ駄目だろ〜が」
妙に育ちの良いことを言って、朔間さんは続ける。
「目があったら、「こいつちゃんと話聞いてんな」って分かんだろ?目があわねぇと話聞いてんのかも分かんね〜し、なんか言いづらいことでもあんのかなって思っちまうじゃん」
口調は荒っぽいけど、言っていることは至極まともだ。でも、でも……。
「あ、あ、あの、恥ずかしくて……。そっ、それが出来たら、苦労、してないです……」
視線は相手の胸の位置。それでもこんなにどもりがちになってしまうのだ。そんな私に、どうしろと?
すると、朔間さんは足を組み直して宙を仰いだ。なにやら考えているらしい、短い沈黙の後に、彼は笑顔で私を見た。
「じゃあさ、今から俺が言うこと聞いて」
「……?」
首を傾げる私に、朔間さんは愉しそうに笑みを深くする。
「30秒間、俺の目を見ろ。そらしたら負けね」
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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました! (2017年10月29日 15時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか? (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます!とてもとても嬉しいです…!私もれいさんにプロデュースされたい!という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…!もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません!笑 続き楽しみにまってます!更新頑張ってください! (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜!ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
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