サマー・タイム/2 ページ48
「おや、小娘。元気そうだね」
「あ、A〜♪」
近くのガーデンテーブルを囲み、白いパラソルの下で優雅に座っていたのは宗さんと奏汰さんだった。朗らかに手を振ってくれる奏汰さんとは対照的に、宗さんの眉間には不機嫌そうな皺が寄っている。テーブルにはアイスティーのグラスがふたつ。隣では肉が焼かれているのに、ここだけリゾート地のワンシーンみたいになっているのは一体何なのだろう。
「ふ、二人も、バーベキューに……?」
問うと、宗さんは憮然とした顔のまま「僕は参加するつもりはなかったのだけどね」と前置きして口を開いた。
「__ここで一人で裁縫をしていたら、急にコンロを担いだ零と渉が現れて「バーベキューしよう!」などと宣いながら僕が呆気にとられている間にさっさと準備を整えて始めてしまったのだよッ!全く僕まで巻き込まないでほしいね、やるなら君たちだけでやりたまえよ!」
「とかいいながラ、仲間外れにされたら寂しいくせニ♪何だかんだ言っテ、この場を離れずにいてくれるしネ。あ、師匠。キノコもう焼けるヨ」
「ぼくのもってきた『ぶり』はいつやけますか〜?」
……うん。いつも通りよく分からない上に突拍子もないし、各自がびっくりするほどフリーダムだけど。でも和気藹々としていて、皆さんすっごく仲良さそうだ。渉さんや夏目くんはもちろん、文句を言っている宗さんや……最初の頃は思考が全然読めなかった奏汰さんでさえも、表情が柔らかいし素直に楽しんでいるように思える。
「っつ〜わけだから、A。おまえも食えよ」
と、後ろから零さんが肩に腕を回しもたれかかってきた。片手には、お肉が大量に乗った紙皿。わかりやすく、心臓が高鳴る。
「零さん、近いです!」
元々距離感がおかしい人だとは思っていたけれど、自分の気持ちを自覚してからさらにその距離感に戸惑う。頰が、じわじわと熱を帯びる。
「そうだヨ、零にいさん。にいさんはただでさえ力が強いんだかラ、そんな風に体重をかけたらAが潰れちゃうヨ。Aはボクたちと違って女の子なんだからさァ?」
「おや、私は夏目くんのことも女の子のように愛らしいと思っていますよ〜♪」
「全く褒めてないよネ、そレ」
拗ねたそぶりを見せた夏目くんが、渉さんのお皿に乗せようとしていたキノコをさっと自分の口に放り込む。その途端大げさに嘆きながら崩れおちる渉さんに、宗さんが頭を抱えた。……やっぱり、見てるだけで面白いなあ。
「……あう」
___数十分後。ふと、ちびちびと焼きエビや鰤を食べていた奏汰さんが眉尻を下げて口を開いた。
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萩(プロフ) - まめだいふくもちさん» まめだちふくもちさんが見てくれてるなんて(涙)。最初コメント見た時に変な声がリアルに出ましたw。ありがとうございます。もう、本当に、夢主ちゃんにお伝えください。草葉の陰から応援してるよ!…と。 (2019年8月27日 22時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 萩さん» 萩さん、コメントありがとうございます。夢主ちゃんの味方をしてくれる方がいて夢主ちゃんも嬉しいと思います……!ここで言うのもアレですが、私も萩さんの作品を楽しみにしております。お体に気を付けて、更新頑張ってください。 (2019年8月26日 20時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
萩(プロフ) - ごめんなさい、これだけ言わせてください。零さんかっけぇ。零さんの言葉ひとつひとつが重くて、夢主ちゃんにはとても大切なことなんだなと思いました。夢主ちゃん!頑張れ!私は!君の味方だぞ!(大声) 毎日この話を読んでは癒されています。これからも頑張って下さい (2019年8月25日 22時) (レス) id: cfe465a6d3 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 厘さん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの成長を温かく見守ってあげてください。同じ奇人Pにコメントいただけて嬉しかったです、ありがとうございます〜! (2019年8月13日 17時) (レス) id: 59bafee163 (このIDを非表示/違反報告)
厘 - …神様ですか?いや、神様ですね。ネガティブな女の子の成長とか見るの好きですし、三奇人の人達も大好きなのでこの作品に出会えて良かったです!熱中症に気を付けてお過ごしください、応援してます。頑張ってください!! (2019年8月12日 21時) (レス) id: 4d8a897ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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