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鬱様、コネシマ様、シャオロン様。
お三方は仲良く肩を並べて、笑いながら歩いていた。
私たちは壁際に並び、邪魔にならない程度に頭を下げて、彼らが通り過ぎるのを待つ。
使用人以外の人物――幹部に限らず――と会った時のルールである。
「トンちが厳し過ぎるんやって」
「そんなこと言うとったら、また粛清されんで」
「えぇ……勘弁してやぁ」
一番後ろに控えていた私の前を過ぎて――
「ん……？」
――藍色のスーツを纏った足が、目の前で止まった。
「ね、君」
どう聞いても自分にかけられた声に、おもむろに顔を上げる。
名指しされた訳ではないため、コルネとグリッサも同じく顔を上げた。
案の定、眼鏡の奥の目は私を見ていた。
『……何かご用でしょうか、鬱様』
「いやぁ、見ない子ぉやなぁと思てな。新しいメイドちゃんやんな？」
「……えっ、大先生もしかして、この子らのこと一人一人覚えてんの？」
「当たり前やん！ 女の子やで！ 城の華やで！」
「キモッ」
「あぁん、ちゅめたい」
大して傷ついてもいないような声で顔を覆う鬱様。正直驚いた。顔には出さないけれど。
エーミール様に言われた、「鬱先生には、気を付けた方がいいかもね」という言葉の意味が分かったような。
「……で、君、名前は？」
『……A、と申します』
「Aちゃんね。うん、よろしくねぇ」
言いながら彼は、私に右手を差し出した。
普通なら、この右手の意味は分かる。だが私は、あえてそれに気付かないフリをしてお辞儀を返した。
『……何かございましたら、何なりとお申し付けください』
「あぁん、ちゅめたい」
彼はそう言ったものの、それ以上の接触はなかった。
さらりと足を踏み出して、歩いて行ってしまう。
私たちはそれを少し見送った後、何事もなかったように歩き出した。
後ろでは、また騒がしい会話が聞こえている。
これが、私たち使用人の日常。
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夜風−yorukaze−(プロフ) - とても面白くて、サクサク読めます！これからも頑張ってください！ (2020年4月26日 17時) (
レス) id: 58cfefca5b (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - wlthzさん» コメント、ご意見ありがとうございます。一言についてですが、このスタンスをとれるのも紙媒体の小説にはないサイトの魅力だと考えていますし、これを気に入ってくださる方も居るので、今後は思いついたときに挿入するスタイルに変更しようと思います。 (2017年7月24日 22時) (レス) id: 7dbb78881f (このIDを非表示/違反報告)
wlthz(プロフ) - コメント失礼します。１話終わるごとに挿入される一言で興が削がれます。物語自体は面白く読ませて頂いているので、そこだけが少し不満です。 (2017年7月24日 19時) (レス) id: 45eb196b6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2017年5月9日 0時
