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「…あの、もう一度いいですか」
「騒がしい、でしょ?」
はぃ……と尻すぼみになる返事と隣でため息をつく榎木さん。
私は今、実家のドアの目の前にいる。
.
遡るは秋笛生放送が終わり、私の車で榎木さんを自宅へ送っている時。年末だしオフはいつから?という在り来りな話題となった。
「29から2日ですね。割と長めに貰えて。」
「俺30からだわ…。…実家?」
「ですかねー。一応長女だし、親戚でもこの年齢の子いなくって子守りが大変なので…」
いつもの事だし仕方ないんですけど、と呆れ笑い。子供のお世話とおじ様とのお酒の付き合いは慣れたものだし、これ多分去年もそんな話した。濱くんにだと思うが。
「…ふーん」
「ちょ、露骨に不機嫌になるの辞めてくださいよ」
「ずっと帰るんでしょ?」
「…まぁ」
「………着いていく」
え?
「…挨拶、行く」
.
「…………あの」
「ドア、開けないの?」
あまりにも嫌で、玄関の前にて5分経過。騒がしいですよ、と繰り返すbotになりつつある。それはまずい。
「…あーーーーー、腹括りますけど…」
感じ取っているのだ。帰る日付と彼氏がご挨拶に〜と言うのはそれとなーくメッセージに添えた。すると既読が着いた瞬間に母親から鬼電。父からはスタ爆。弟は興味無さそうだったけど、アイツは顔合わせたら別の意味でうるさくなりそうだし。
「…………いきます、か」
「娘をくださいって言いに行く俺がこんなにも緊張してないように見える構図、ある?」
やめてください、それ言っちゃおしまいです。そう思いながらインターホンを押して、玄関の扉に手をかけた。
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作者名:東城つばさ | 作成日時:2021年7月24日 0時