きっと、ぜったい、だいじょうぶ。ふぃふす。【榎i木l淳i弥】 (ページ17)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:30,828 hit

206 ページ17

テストから本番まで首を傾げる音響さんに、ブースにいる役者にはかなり緊張が伝わっている。原因は、と言うと。

「透里、もう少し危機感のある芝居にできないかな？…うーん、責任感を忘れてる」

「あ、…はい」

左隣のマイク前に立つ彼を見て、その後ろの音監を交互に見て。完全にさっきのでペース乱されてるじゃん、と悔しくなる。

「そこだけ抜きで録ります！29から萩花が怒る68まで！お願いします！」

「「お願いします」」

.

「…これでいこうかな。じゃあ本日の収録以上になります！」

お疲れ様でした、ありがとうございました、その声の後に塩月ちゃん！と音監さんから声が掛かる

「最後の盛り上げ方ナイスだったよ、その後繋げやすい落とし方だった」

「ありがとうございます！」

今の私の悔しさが乗っかったから出た良いテイク、内心複雑なのだが結果オーライだと飲み込む。
あやねるさんがちょっかいをかけてくるからそれに乗っかりつつ、ゆるゆると帰る支度をする。ブースの外に出ると先に出ていたメンズ達が無事新人たちに絡まれていて、あやねるさんと「大変そうだね～」なんて小声で話す。

「…お、珍しい」

「杉田さん」

「あー、榎木くんたち絡まれてるのか」

いつも隣にいるから、へぇ、いないとこうなるんだ～と隣を通り過ぎる。助ける気配がない辺り…と苦笑して、私も自分の荷物をまとめる。

「ご飯会しないの？」

「…うーん、あの調子だと…」

「…じゃあ私と行かない？」

「……マジですか」