Engage Ring. (ページ5)

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お通夜までの時間

Aちゃんは暖翔のそばから離れなかった。

帰るタイミングを逃してしまった俺は

もちろん正装ではないから

お葬式場の外で

Aちゃんのお母さんから話を聞いた。

母「初対面なのに、こんな話ごめんね」

すごく穏やかな雰囲気のお母さんで

Aちゃんから出る優しいオーラとそっくり。

『こんな格好なんすけど、

お通夜始まる前に手だけ合わせても良いすか。』

母「ありがとう。」

Aちゃんの目の前で眠っている暖翔は

暖かい表情をしてるように見えた。

きっとAちゃんは

お母さんや、暖翔にたくさんの愛情をもらって

大事にされてきたんやろうなあって。

だからこそ、

Aちゃんが言ってた

"友達はいない"

って、その意味が分かる気がする。

簡単には扱いきれない。

高級な宝石を扱うような。

母「Aをモデルにスカウトしてくれたんよね」

『はい、僕はまだアシスタントなんすけど…』

Aちゃんのお母さんは

まだ何の影響力も持たない俺に

"Aを、よろしくね"

と言った。

"Aを見つけてくれてありがとう" と。

俺にできることなら、

何でもしようと思った。

「まま…お腹すいた...」

母「あっ！ごめんご飯忘れてた！」

暖翔母「ごめんな！全然行ってきてよ～」

こんな時でも明るいお母さま方2人が

すごくかっこよくて素敵や。

母「廉くんも一緒に食べに行こ！」

『いや、俺はもう帰りま…

「廉くんも。」

母「こんな遠くまで来てくれたんやし、ね？」

『じゃあお言葉に甘えて…車は僕出しますね！』