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ゲームが開始して、暗号機が三分の一程進んでからマイクとAさんから『ありがとう!』と定型文が送られてきた。ほぼ同じ方向からなのを見る限り、同じ暗号機を解読しているのだろう。
「キャンベルさん」
「やぁ、ナイエルさん」
白のドレスのナイエルさんが駆け寄ってきた。今日のハンターは魔トカゲ・ルキノさんで優しくする気分なのだと伝えられ、今は二人の近くにいるという事を知る。
ナイエルさんはそのまま他の暗号機に行く事なく、僕が解読していた暗号機に触れ始める。……何か、僕に用事でもあるのだろうか。無駄に人と一緒にいる人物ではないので、ぼんやりと理由を想像してみるが思い当たる事は一つしかなかった。
「貴方って」
「うん?」
「Aの事、苦手でしょう」
ほら、やっぱりAさんの事だ。
「…」
「Aは貴方を好いてるわ」
「知ってる」
「いいご身分ね。彼女からの好意を拒否するなんて」
向かい合わせで解読している状況では、彼女の睨みを真正面で受け止める事しかできない。
普段の穏やかなナイエルさんからは想像できないような冷酷な表情。その瞳の奥に宿る感情は、怒りだろうか。
「ここじゃ身分なんて関係ない、そうだろ?」
「ええ、でもね、あの子を拒否するのは神への反逆もいいところよ」
「Aさんが神って事かい」
「私にしてみたら、そうね」
「ふぅん」
一体過去にどんな大きな恩を売られたのだろうか。
Aさんを神格化している彼女は興味なさげな相槌を打った僕から視線を外した後に、マイクとAさんの方向を見詰める。
「いい子なのよ、あの子。女優なんて性悪ばかりと思っていたんだけど、彼女は人を貶す事もしない」
「へぇ」
「外見も可愛いし、中身も可愛げがある。私が男なら逃がさないけど」
「僕と君を一緒にしないでほしいな」
ガチャン、と派手な音を立てて暗号機の解読が終了する。
べ、と舌を出せば彼女は口を不満げに尖らせた。
自分の意見を人に押し付けようとする人は苦手だ。
「やぁ、キャンベルにナイエル」
「ルキノさん」
「ルキノさん、マイクとAさんは?」
「あそこの暗号機を解読している。次の暗号機まで送ろう」
「私、二人と合流するわ」
「そうか」
チラ、と僕を一瞥した後ナイエルさんは背中を向け走り去っていった。
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yuki maki(プロフ) - Twitterフォロー失礼しまーす (2022年5月1日 17時) (レス) id: 6c4d3fd2ca (このIDを非表示/違反報告)
名無してゃん - 人外シリーズ待ってましたっ!ほんとに楽しみにしてたので嬉しいです(´˘`*)ありがとうございます(´˘`*) (2020年12月23日 18時) (レス) id: 256c8decd9 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - ハルさん» 閲覧、コメントありがとうございます。私の他にも同じ感性(?)性癖(?)の人がいて嬉しいです(´ω`*)尊いとまで言って頂けて…!嬉しみの極みでございます…!こちらこそありがとうございます…! (2020年2月18日 1時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 人外シリーズ好きです。尊いです。有難う御座います。 (2020年2月12日 13時) (レス) id: ca92ab3e55 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 黒いロシア帽さん» 閲覧、コメントありがとうございます〜。つまり禿げですね(((そう言ってもらえてとっても嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります! (2020年2月3日 15時) (レス) id: a8cecf9880 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年11月17日 22時