最期の幕開け ページ6
『父の転勤で九州から来た、逢坂Aです。よろしく。』
教卓の隣に立って、俺は自己紹介をする。
視線が一気に俺に集まる。
こんなに沢山視線が集中したのは、俺が重罪を犯した時以来だ。
あの時は恐怖の眼差しだったが、今は物珍しそうな眼差しで見られている。
“かわいい”だの、“女子みてぇ”だの、“細ぇ”だのと聞こえてくる。
俺からしてみれば、生徒達のほうが可愛いんだがな。
ガキができたみたいで、愛着が湧くじゃないか。
まぁ俺も重罪人になりたての時に比べれば、だいぶ円くなったものだ。
相「爆豪の…あの目付が悪い奴の隣の席がお前のだ。」
爆「・・・ﾁｯ」
確かに、金髪の不良は目付が最悪だった。…威嚇中の猫みたいだ。
俺を見て、舌打ちして目を反らす。
子供、だな。
1000万年以上の時を過ごした俺からしてみれば、皆ガキだけど。
今さら、恋人なんてできない。年の差が優に一世紀を超えるって、相当の価値観の違いがある。
そもそも作る気もないけど。
俺は相澤先生の指差す席に、鞄を置いて座った。
爆豪と呼ばれる少年は、俺を睨む。
俺のヴィラン時代とは似ても似つかないような少年だった。
当時の俺は、普段は温厚だった。いつも寝不足の目を擦っていたのを思い出す。
何を言ったところで、重罪人だけど。
『なぁ、爆豪…だっけ？
これから、よろしく。』
爆「俺は、馴合いなんざ御免なんだよ！
話かけてくんなクソチビ！！」
随分な言われようだ。カルシウムが足りていないんじゃないか？
俺には、ガキが頑張って虚勢張ってるようにしか見えない。
俺より10cmくらい高い位置で、金髪の髪の毛が揺れる。
ススキみたいで、柔らかそうだ。
元ヴィランが、こんなところにいたなんて知ったらパニックだろうな。
今は生意気な爆豪でさえ、たぶん迂闊な口をきけなくなるだろう。
HR終了のチャイムと同時に、大勢で俺の周りを囲む。
八「ちょっと、爆豪さん。少しは言い方ってものが…」
爆「あ”？」
『あぁ、気にしてないよ。ありがとう、…えっと、』
八「そうですの…。八百万百ですわ。クラス委員をしています」
飯「同じくクラス委員の飯田天哉だ。よろしく、逢坂くん！」
「ん、よろしく。」
クラス委員はしっかりしていて、頼りになりそうなメンツだ。
それから1時限目が始まるまで、俺は質問攻めにあっていた。
趣味や好きな食べ物、休日の過ごし方や個性について聞かれた。
若いって、元気だな…。
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作者名：メチレンブルー | 作成日時：2016年9月27日 19時
