xx＿09 ページ13
「あの、急に泣いちゃってごめんなさい」
涙が乾いてきて、気分もだいぶましになった。
迷惑を掛けてしまった男性にきちんと頭を下げる。
「いえ、それよりも、私でよかったら話を聞かせてくれませんか？」
予想もしていなかった申し出に目を丸くする。
わたしのことなんか放って、そのまま帰ればいいのに。
それに、わたしも自分の話をあまりしたくはない。
聞いてて気分がいい話ではないし、どうせこの人には理解できない話だろうから。
「ごめんなさい。今はひとりになりたいので……」
話したくないとは言わず、無難な返しに落ち着いた。これで納得してくれると思ったんだけど、そうはいかないらしい。
「こんなふうに泣いてる人を放ったまま帰れませんよ。せめて事情だけでも……＿＿」
「失恋しただけです。だから………今はひとりになりたいんです。早く帰ってください」
最低。わたし、嘘をついちゃった。
人にからの親切がこんなにも苦しい。
こんな優しい人に嘘をついてしまう自分も、誰にも相談できない自分も大嫌い。
「それは、できません。しにたいって、そんな顔をしている人を放ってなんて帰れません」
しにたいって顔？
私がそんな表情をしているの？
わからない。この人にも、わたしがそんなふうに見えるんだ。
「わたし、大丈夫です。もう帰らせてください」
引き留めようとする男性の手を振り払って立ち上がる。
わたしの気持ちなんて絶対に、誰にも理解できるはずがない。理解しなくていい。
中途半端に踏み込まれたら、離れて行かれた時がつらいだけだから。
最後に、もう一度だけ引き留めて欲しい。でも引き留められるのが怖い。
もう自分の本心もわからなくなっていた。ただ死にたいだけ。
男性に背を向けた時、よく通る声が静かな公園に響いた。
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作者名：芳野 | 作成日時：2023年3月31日 23時
