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『(殿下は――食べてる。他の騎士たちも)』
様子を窺いながら、自分に集まる視線を感じずにはいられなかった。
舌鼓をうち始めた男性諸君を除くなら、その視線の持ち主といえば彼女らしかいない。
ご令嬢たちは揃って、不安そうに私を見ていた。
彼女たちにとってある種の頼みの綱になってしまっているという自覚は――残念ながら、ある。
きっと彼女らは、私が動けば動き出すだろう。
『(……全部美味しそうだけど、何からいこうかなぁ)』
順番とかあるかな、マナーとかあるかな。だって何にも知らない。
そしてそんなときお手本にするなら、遠くに座るグルッペンさんよりも。
「……」
――すぐ隣の、この人。
行儀は悪いかもしれないが、四の五の言っていられない。
私は隣の彼を横目で観察しつつ、その食べっぷりを真似してみようと思い立ったのだ。
特に話もせず黙々と食べている男が、メインの肉料理をとったなら。私もそれを口に運ぶ。
『(……うんま)』
思わず口を押さえる。
少し濃いめなのが普通なのだろうか。ガツンとくる味付けは、貴族の令嬢にとってはなかなかに刺激的だ。
しかし、何より美味い。こりゃあれだ、ご飯が進むやつ。
『(次、スープ)』
男がスープの入った椀に口をつけたなら、私もそれに倣う。――美味い。
対照的に優しい味のスープが、じんわりと口の中に広がった。
美味しい、これも、あれも。
一つ一つの料理にいちいち感動していた私は、もはや周りの様子など気にしていなかった。淑女として大丈夫だっただろうかと反省したのは後の話だ。
とにかく私は、隣の男を真似しては同じ順序で料理を口に運ぶ、奇妙な女になっていた訳で。
『……？』
そこで男が手にとった一際小さな小鉢。入っているのは黒い液体で、今までは彼も手をつけずにいたものだ。
何だろう、どれかにかけるのかな。小鉢を摘み上げて、隣を盗み見る。
そこで、不躾にも二度見をかましてしまった。
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感情末期 - コメント失礼しますー!巡回いってきます!!大好きです!!いってきます! (2021年10月5日 22時) (
レス) id: c7b86b77aa (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。頑張って組み込んだコメディ部分、ウケたようで嬉しいです(笑) 応援ありがとうございます。 (2020年5月21日 2時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - コメント失礼します！ふにんきのところ笑っいました。更新頑張ってください！応援してます！ (2020年5月21日 0時) (レス) id: a5a3967b27 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 櫻華さん» コメントありがとうございます。これからもご満足いただける作品になるよう頑張ります！このご時世なので、櫻華さんも重々ご自愛くださいね。 (2020年5月20日 22時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(プロフ) - 初コメ失礼します！リアリティのあるお話で、とてもハマりました！お身体に気をつけて、これからも更新頑張ってください！ (2020年5月20日 16時) (レス) id: e0d01a51ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月24日 1時
