▼ ページ19
.
後ろからかけられた声にびくりと反応するが、それは目当ての人のものではなかった。
振り向くと、よくよく見知った人の顔。
爽やかに切り揃えられた短髪が良く似合うその男性は、Aの顔を確認すると、ぱっと表情を綻ばせた。
『え、テオドル！？』
「A！ ひっさしぶりだなぁ、元気にしてたか！？」
『なんでここ――へぶっ』
駆け寄ってきた男――テオドルは、そのままの勢いでAへと抱き着いてきた。
彼は割と長身なので、小柄なAはすっぽりと収まってしまう。加えて鼻と口辺りを塞がれ、Aはバシバシとその背中を叩いた。
『急にびっくりするからやめてよ……でも、ほんとに久しぶりだね。"ウチ"に用事？』
「おう、せっかくだから積もる話でもしようぜ」
『ふふ、そうだね。……あ、それじゃあお二人とも、失礼します』
「お、おう」
「……気ぃつけてな」
呆気にとられるシャオロンとコネシマの前で、Aと男は連れだって歩いていってしまった。
突然現れた男はAとはかなり親しげで、今も彼女の肩に腕を回している。
その光景を眺めつつ、二人はぶるりと震えた。
「……おい。これはアイツに知らせるべきちゃうか」
「イヤや俺、機嫌悪うなったアイツに八つ当たりされるん見えとるやんけ」
「……。……見んかったことしよか」
珍しく意見を合わせて、うんうんと小刻みに頷くシャオロンとコネシマ。
引きつった笑顔で振り向いたとき、そのままの表情で、二人の顔からすとんと色が抜け落ちた。コネシマに至っては、喉から普段出ないような悲鳴が洩れている。
「――何を、見んかったことにするって？」
「ゾっ……ムさん！ いつからそこに！？」
「……。"A、久しぶりだな元気してたか"」
ついにシャオロンの喉からも悲鳴が洩れた。よりにもよってそこからかよ、と二人は止まらぬ冷や汗をかく。
「あんなゾム、別にあれは――」
「お前ら、今日暇やんな？」
「え……？ い、いや今日は」
「暇、やんな？」
「……暇です」
ゾムはしっかりと、"フィリアス"のホームに入ったはずのAが、先程の男と共に再び外へ出掛けていったのを捉えていた。
「……。尾行すんで」
「「尾行」」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 252人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
江之子(えのこ)(プロフ) - あんりさん» コメントありがとうございます。自分でもこの設定好きです(笑) これからもよろしくお願いします！ (2020年5月15日 12時) (
レス) id: f1826b23af (このIDを非表示/違反報告)
江之子(えのこ)(プロフ) - ピヨさん» コメントありがとうございます。どちらも楽しんで頂けて私も嬉しいです。是非最後までお付き合いください！ (2020年5月15日 12時) (レス) id: f1826b23af (このIDを非表示/違反報告)
あんり - ひいぃ...好き...もう少し続くとの事なので楽しみに待ってます！ (2020年5月15日 8時) (レス) id: 4620368618 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。本作品を最初からrbロ編とzム編を全て読んだのですがどちらの物語もとても面白くて、設定も個人的にとても好みで最高でした。完結まで楽しみにしています。 (2020年5月10日 8時) (レス) id: 3ec25a42f9 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 豆腐の中の棒人間さん» コメントありがとうございます。確かに言い回しは沢山考えて練っている部分ですので、褒めて頂けると嬉しいです！実はご作品の「転生者は…」を密かに楽しませてもらってます。お互い頑張りましょう！ (2020年5月6日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
