64#おやすみ ページ45
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止まった息は、彼のものだった。
かろうじて曖昧に上がっていた口角が、ゆっくりと下がっていくのが目に見えて分かる。
「――……は」
瞼を震わせて、笑ったような、それでいて溜め息のような、そんな声がロボロから洩れた。
「なに、それ」
『……』
「何なん、それ。……なぁ、冗談やろ、もっかい言って？ なぁ……」
『……』
「A、なぁもっかい――」
『別れましょう、私たち』
「――っ」
くしゃり、目の前にまで詰め寄っていた顔が歪む。
Aはそんなロボロに対して、あくまでも穏やかに微笑んで、そして言うのだ。
『今日で、終わりにしましょう』
「なんで……？ なんで急にそんなこと言うん？ いやや、絶対、なんで」
なぁ、なぁ、とまるで幼子みたいにAの腕を揺らして、懇願するロボロ。
その手に己の手を重ねてぎゅうと握れば、びくりと跳ねて、少しだけ力が緩む。その隙を突いて、Aは弱々しい拘束から逃れた。
「っ、俺のこと、嫌いになったんか……？」
『……』
――そんなこと、ないよ。
まさかそうとは答えられまい。自分から別れを切り出しておいて。
そうよ、嫌いになっちゃったの――意を決して
「たのむ、嘘ってゆって、おねがいやから」
『……』
「じょうだんって、ゆって。なぁこっちむいて、A」
段々と拙くなっていく呂律に、胸の芯のほうから込み上げる何かを必死に押し留める。
ぐっと眉根に寄せた皺のおかげで、これが冗談で切り出したことではないのだと、彼にも伝わったらしかった。
「……もしかして、ウチの奴らに、何か言われたんか？」
『……』
「そうなんやな？ それなら、大丈夫やで。おれが、何とかしたげるからな？ だから、だいじょうぶやねん」
『……ロボロさん』
「はは、なに、"さん"はダメってゆうたやん。んふふ、Aは忘れんぼうやなぁ」
ひどく歪んだ表情で笑ってみせる彼が、無理矢理に吊り上げた口角は、とても痛々しい。
もう一度彼に向き合って、両手を広げてみせれば、ロボロはそこで安心したように眉尻を下げた。
ベッドの上で膝をずり寄せてきて、背中にまで回された体温に応えるように、まだ僅かに震えている背中を撫でさする。
「びっくりした……A、だいすき」
『ロボロさん、ごめん――嘘じゃない』
「……！」
ひゅ、と短く息を吸い込む音が、耳のすぐ傍で聞こえた。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
