63#波紋 ページ43
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ロボロが現在住まいとしているのは、"我々だ！"のホームからあまり離れていない場所にある、寂れた集合住宅の一角だった。
彼自身が意図的にそうしているのか、貴族だとは思えないほどに質素な部屋。Aがここに来るのはもう、三度目になる。
「んでな、コネシマの奴、そこでまた迷子になってん」
『え、ふふ、また？ ショッピ君怒ったんじゃ？』
「ブチ切れや。斧持ち出しよったからな」
至極真面目な顔でそう話すロボロに、声を上げて笑ってしまう。
いまだ笑いを噛み殺した口元を震わせつつも、Aは再び包丁を動かし始めた。
「……ん、こっち出来たで」
『はい、ありがと』
皮を剥き終えたじゃがいもが、ボウルに入れて差し出される。
それを一口大に切ろうと手に取ったところで、ロボロも次の作業を探してきょろりと見回した。
『……もう十分だよ？』
「ええんや。俺が一緒にやりたい」
『んふ、そう？』
だけどすでに、材料の下拵えはこのじゃがいもで最後だ。
Aは場所をロボロに譲って、作業を変わってもらう。その間に、二人で買った大きめの鍋を棚から取り出してコンロに準備した。
今日は、ベタにカレーである。二人の間では、一緒に料理をするのがここ最近のブームなのだ。
やがて出来上がったものを向かい合わせで食べて、やっぱりカレーは失敗せんな、とか頷き合って。
使った食器を綺麗に洗うのまで隣同士で済ませて、その距離で言葉を交わしては些細なことで笑う。
『わ、もう夕方だ。ロボロは明日早いの？』
「あー、そういや朝から依頼やっけか」
『そうなんだ。じゃあ長居は出来ないね』
「えー……待ってもう帰るん？」
『ふは、まだ、もうちょっといる』
「んー、んふふ」
だらりとベッドに身を預けた彼が、ちょいちょいと手招きする。
歩み寄れば腕を掴まれて、来て、と短く誘われた。まだ少し恥ずかしいのだが、ロボロの横に、向かい合うようにして寝そべる。
この体勢になっても、二人は初々しい恋人同士のままだ。
特に何をするでもなく、顔を見合わせて笑い合うだけ。まだ余裕のありそうなロボロが、そっとAの髪を撫でる。
「……幸せやなぁ」
そう言って、はにかんだ彼の表情が好きだ。その表情こそ、自分を幸せな気持ちにしてくれるから。
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江之子(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます。頑張ります！これからもお楽しみください。 (2020年7月13日 16時) (
レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 藻塩。さん» コメントありがとうございます。気に入ってもらえる展開でしたか！作者も好きです、書くときちょっと辛くなりましたが…(笑) (2020年7月13日 16時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - コメント失礼致します。とても面白く読ませて頂いています。これからも更新頑張って下さい。 (2020年7月12日 19時) (レス) id: 8cc228e6cc (このIDを非表示/違反報告)
藻塩。(プロフ) - 江之子さん» コメ失礼します、すんごく展開が好きです…！これからも無理しないように頑張ってください！ (2020年7月12日 14時) (レス) id: 7b5f2afcc4 (このIDを非表示/違反報告)
江之子(プロフ) - 菜の葉さん» コメントありがとうございます。登場人物たちに感情移入してもらえるとは、この上ない褒め言葉です…！頑張ります。 (2020年7月11日 0時) (レス) id: f8221d30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：江之子
| 作成日時：2020年4月20日 23時
